研究課題/領域番号 |
16K07081
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石井 亜紀子 筑波大学, 医学医療系, 講師 (10400681)
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研究分担者 |
喜納 裕美 (早下裕美) 日本医科大学, 医学部, 助教 (60532728)
岡田 浩典 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (80416271)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 組換えAAVベクター / 歯髄類似細胞 / 筋ジストロフィー / 遺伝子治療 |
研究実績の概要 |
将来的なヒト遺伝子・細胞治療への応用を目標に,カニクイザルに免疫寛容を誘導し,免疫抑制剤を用いずに組換えAAVの骨格筋での発現を持続させる新規技術を開発するとともにその安全性と発現効率の改善を検討することを目的とした研究を行なった. 免疫寛容の誘導法として,当初計画では経口免疫寛容導入を予定していたが,国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センター共同利用施設の利用許可が得られず,歯髄類似細胞を用いた免疫寛容誘導に切り替えて実験を行った.間葉系幹細胞(MSC)はナイーブT細胞から制御性T細胞を誘導することで免疫寛容を誘導することが知られている.間葉系幹細胞の一種である歯髄類似細胞も同様の作用を持ち,免疫原と同時に投与することにより,有効な免疫寛容を得ることが可能である.経口減感作と異なり,確実に投与できる点も利点である. 実際には,カニクイザル成体に対し,歯髄類似細胞とAAV8-CMV-LacZを経静脈投与し, その7日後に再度歯髄類似細胞を投与し,翌日AAV8-CMV-LacZを筋肉内投与した.歯髄類似細胞は共同研究を行っている国内製薬企業からの供与をうけた.AAV8-CMV-LacZ投与量は,これまでにサルで検討した結果から1x10*13vg/muscleとした.投与は左右の上腕二頭筋,前脛骨筋の計4箇所に行った.LacZ遺伝子発現AAVベクター投与群2頭,コントロール(ベクター非投与)群2頭を使用した. 経時的に末梢血リンパ球を採取し,抗原曝露後のインターフェロンγ産生能の減弱を確認することにより免疫寛容の誘導を確認した.導入8,16及び24週後に筋組織の生検を,42週後に安楽死後のサンプリングをそれぞれ行い,同時に各時点で採血も実施し,安全性の確認をおこなった.現在,LacZの発現をウエスタンブロット法及び免疫組織化学染色法を用いて解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では経口免疫寛容導入を予定していたが,国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センター共同利用施設の利用許可が得られなかったため,歯髄類似細胞を用いた免疫寛容誘導に切り替えて実験を行い,全計画の約3分の1の成果を得ることができた.間葉系幹細胞(MSC)はナイーブT細胞から制御性T細胞を誘導することで免疫寛容を誘導することが知られている.間葉系幹細胞の一種である歯髄類似細胞も同様の作用を持ち,免疫原と同時に投与することにより,有効な免疫寛容を得られた.動物実験であるため,経口減感作では投与の不確実性が否めなかったが,静注することで確実に投与できた点が解析上も順調に結果を得られた要因の一つと考えられる.歯髄類似細胞を用いたサルへの免疫寛容誘導法についても新規の試みであり,様々な遺伝子治療の基礎実験すべてに応用可能な実験技術である.また,抜歯した歯髄などから歯髄類似細胞は取得可能であり,筋ジストロフィーのみならず,他の遺伝性疾患の患者への治療応用にも期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所霊長類医科学研究センター共同利用施設の利用許可が得られたので、歯髄類似細胞を用いた免疫寛容誘導の実験を継続する.残りの(LacZ遺伝子組換えAAV8ベクター:1頭)+(LacZ遺伝子組換えAAV9ベクター:3頭)+コントロール群1頭, 計5頭のカニクイザルについて初年度と同じ実験を行う.AAV8-CMV-LacZとAAV9-CMV-LacZの結果を合わせて論文化する.
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次年度使用額が生じた理由 |
筋生検後の凍結切片作成のための液体窒素料金を支払う予定であったが,事務手続きについての連絡が伝わらず,校費から引かれてしまったため.
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き行う実験で得られる生検筋の染色やスライドガラス購入の一部に使用する.
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