昨年度まで、マウス体内でヒト免疫系を再構築した免疫ヒト化マウスを作製し、組換え麻疹ウイルスを接種することで、この麻疹感染モデルが従来のマウスモデルよりヒトに近いモデルであることを示してきた。今年度は更にヒトに近いモデルの構築を目指し、ゲノム編集技術の一つであるCRISPR/Cas9システムを用いて、免疫ヒト化マウスの作製に使用する超免疫不全NSGマウスの遺伝子改変を行った。獲得免疫や細胞性免疫の確立に重要な役割を果たす主要組織適合性抗原遺伝子(MHC)に着目し、まずはMHCクラスIもしくはIIを欠失させたNSGマウスを作製した。クラスI分子は白血球を用いて、クラスII分子は骨髄から分化させた樹状細胞を用いて、フローサイトメトリーにより完全に細胞表面から欠失していることを明らかにした。これらのマウスは交配させ、MHCクラスI/II分子をダブルで欠失したマウス系統を確立している。また、MHCクラスIIのH2-Aa遺伝子領域にヒトHLAであるDRA遺伝子をノックインしたマウス系統も作製した。以上のことより、NSGマウスをゲノム編集により遺伝子改変できる技術基盤が整った。今後マウスMHC分子を欠失しヒトHLA分子をもつマウスを用いて免疫ヒト化マウスを構築し、よりヒトに近い麻疹ウイルス感染モデルの構築を進める。確立した改良型免疫ヒト化マウスは感染症やがん等の治療法の確立にも役立つものと考える。
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