研究実績の概要 |
Coproporphyrinogen oxidase (Cpox)遺伝子に活性低下型突然変異をもつマウス系統群を用いて、白内障の発症を遅延/早期化する修飾遺伝子の同定を進めた。 最終年度はRNA-Seq法によりBALB.NCT-CpoxnctマウスのレンズにおけるmRNA転写産物を網羅的に解析した。その結果、レンズの構成や機能に関係する多数の遺伝子発現変化に加えて、脂質代謝など様々な生物学的経路の変動が確認された。特に小胞体ストレス反応経路の遺伝子発現の亢進が顕著であり、この経路が白内障の予防・遅延のための新たな介入ポイントとなりうることを明らかとすることができた。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、第3染色体上の白内障発症遅延/早期化遺伝子の強力な候補として、gap junction protein, alpha 8 (Gja8)遺伝子においてMSM系マウスに特異的なI345Rアミノ酸置換を生じるミスセンス変異を同定した。GJA8タンパク質はグルタチオン輸送体としての活性を有することから、白内障発症の遅延・早期化への酸化ストレスの関与が示唆された。 第16染色体の修飾遺伝子に関しては、NCT系マウスの全ゲノム解析塩基配列データを取得し、2.33 cM~30.66 cMの染色体領域内での塩基変異多型を検索した結果、レンズの構造・機能に関連するperiplakin (Ppl)遺伝子に2ヵ所のミスセンス塩基置換変異を、さらにその変異と白内障との関連が知られているarmadillo repeat gene deleted in velocardiofacial syndrome (Arvcf)遺伝子に2ヵ所の3塩基挿入/欠失多型を見出した。これらの遺伝子が関与する経路が、白内障の予防・遅延のための新たな介入ポイントとなりうることを明らかとした。
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