筋萎縮性側索硬化症(ALS)は脊髄中の運動ニューロンが選択的に侵され、重篤な筋肉の萎縮をきたす神経変性疾患である。申請者はALS様病態を呈する自然発症の新規突然変異マウスを発見した。申請者はその原因遺伝子がChmp2A遺伝子であり、ミスセンス変異によりL173Pの変異を示すことを明らかにした。一方、CHMP2AのファミリーであるCHMP2Bはヒトの神経変性疾患の原因遺伝子であることが報告されている。特にヒトの認知症と伴うALS(ALS-D)患者においてCHMP2B遺伝子のミスセンス変異が多数報告されている(p.Q206H等)。Chmp2AおよびChmp2BタンパクはESCRT-IIIサブユニットの構成成分である。ESCRT-IIIは多腔性エンドソーム(MVB)を形成し、ユビキチン化を受けた不要な膜タンパク質を分解する働きがある。Chmp2AおよびChmp2Bの変異ESCRT-IIIの機能異常により神経細胞に異常タンパクが蓄積してALSを発症する可能性が考えられる。本研究ではゲノム編集技術により、Chmp2AおよびChmp2Bの変異マウスを作製し、表現型を解析することを目的としている。昨年度までにChmp2AヌルKOマウス、Chmp2B Q206Hマウスを作製した。Chmp2A KOマウスは発生の早い段階で胎生致死となった。Chmp2B Q206Hマウスのホモマウスは表現が無く正常であった。今年度はさらに Chmp2A L173Pマウスを作製した。このマウスのホモ個体は低体重を示し、歩行異常が認められた。寿命は約20日であった。現在はこのマウスを用いて表現型の解析を行っていると共にChmp2BのヌルKOマウスを作製している。
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