研究課題/領域番号 |
16K07089
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
鈴木 昇 三重大学, 地域イノベーション推進機構, 准教授 (00202135)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 発がんモデル / K-Ras / QTL解析 / 修飾遺伝子 / CRSPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
これまでの研究で、条件的に誘導可能ながん型K-Rasドライバーがんモデル動物の系統差を用いてQTL解析によって、Ras変異に依存した発がんプロセスを修飾する複数の新規遺伝子座をマップしてきた。各遺伝子座にはRas変異後に発がんに関与すると推定されるシグナル伝達関連遺伝子(修飾遺伝子)候補が複数含まれている。どの遺伝子が真の修飾遺伝子かを検定するには、従来の交配による手法では、膨大な動物数と時間を要する。この問題を克服すべく、昨年度に引き続き、迅速なin vivo解析システムの構築を進めてきた。条件的に誘導可能ながん型K-Rasドライバーがんモデル動物の肺に、組み換え酵素遺伝子Creを発現させ活性型K-Ras遺伝子を誘導し発がん初期イベントを始動させ、同時に複数の遺伝子をshRNAによるRNA干渉によって機能抑制可能なレンチウィルスベクターを用いた実験系を開発した。系の機能性の確認として、すでにドミナントネガティブレセプターによって発がん抑制を確認済みである骨形成因子受容体BMPR1Aについて、2か所に作用して発現ノックダウンするshRNA発現Creウィルスを作成して発がんへの影響を検討した。In vitroでは明瞭なmRNA量の減少を認めたのにもかかわらず、肺上皮に感染させたin vivoの実験では、コントロールに比べて有意な発がん抑制を認めなかった。実験システムの問題点として、shRNA発現量が十分ではない可能性が示唆された。成果については、国内の複数の学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
系の機能性の確認として、2か所に作用して発現ノックダウンするshRNA発現Creウィルスを作成して発がんへの影響を検討した。この2か所のshRNAはIn vitroで明瞭なmRNA量の減少を認めたが、in vivoの実験では有意な発がん抑制を認めなかった。実験システムの問題点として、shRNA発現量が十分ではない可能性が示唆された。CRISPR/Cas9システムの応用系としてのアデノウィルスベクター構築は、原因不明であるが、ウィルス粒子産生が得られず中断となった。以上の理由により、ベクターデザインの再考が必要となったため、進捗は当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ベクターの再デザインを行う。shRNAによるRNA干渉ではRNA発現量のコントロール(増大)の問題点、アデノウィルを用いたCRISPR/Cas9による遺伝子破壊ベクターではウィルス産生の問題点の克服の困難が予想されるため、より単純なベクターを構築する。sgRNAを複数発現可能なCre発現レンチウィルスベクターを構築する。RNA干渉とは異なり、遺伝子を両アレルを破壊すると予想されるため、ターゲット遺伝子機能は確実に抑制されるデザインとなる。ウィルベクターの制約上、Cas9たんぱく質を全身の細胞、または肺特異的に発現する動物を作製し、これと条件的に誘導可能ながん型K-Rasドライバーがんモデルマウスの交配により、ダブルトランスジェニックを得る必要があるが、他機関と共同の目途がついており問題ない。
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