研究課題
がん患者由来ゼノグラフト(PDX/NOG)モデルの膵癌株に加え肺癌・大腸癌株のZNF185発現とEGF-EGFR相互作用の相関について、化学療法の前後における変化について臨床経過に相関する結果を得た。また、効果的にPDX/NOG解析を行うためにFK506等を用いてヒトリンパ球増殖状を制御する方法を検討した。182例の膵癌臨床切除例で、細胞質陽性は169例 (92.8%)、細胞膜陽性は71例 (39.0%)、核陽性例は56例 (30.7%)であった。全生存期間の中央値は細胞膜陽性例で21.3ヶ月 、細胞膜陰性例で30.2ヶ月 、であり、細胞膜陽性例で有意に生存期間が短かった (P=0.044)。無再発生存期間の中央値も細胞膜陽性例で10.7ヶ月 、細胞膜陰性で12.9ヶ月であり、細胞膜陽性例で有意に短かった (P=0.038)。全生存期間に対する多変量解析ではリンパ管侵襲、リンパ節転移陽性、ZNF185細胞膜陽性が独立した予後不良因子であった (odds ratio [OR]: 1.51 [95% CI; 1.04 - 2.19], P=0.029)。無再発生存期間に対する多変量解析ではリンパ管侵襲、静脈侵襲、リンパ節転移に加え、ZNF185細胞膜陽性が独立した予後不良因子であった(OR: 1.43 [95% CI; 1.003 - 2.05)), P=0.048)。182例中再発部位が不明な19例を除き、再発例103例と無再発例60例を合わせた163例についてZNF185の発現と再発部位の関係を検討した。多変量解析にてZNF185細胞膜陽性例は血行性転移(肝、肺、骨、胸膜、副腎)を起こしやすい傾向にあった (OR: 1.82 [95% CI; 0.92 - 3.60], P=0.081)。以上からZNF185の細胞内局在と転移能や生命予後の相関関係を発見し報告した。
2: おおむね順調に進展している
対象を膵癌および肺癌、大腸癌に拡大して予定以上の50例以上のPDXの免疫組織学的解析を行った。膵癌以外においても転移巣や進行例においてZNF185の強い発現が認められた。
膵癌、肺癌、大腸癌PDX/NOGモデルの免疫組織学的解析により特に転移巣におけるZNF185発現のパターンを解析する。臨床データとゲノム解析結果を統計学的に解析する予定である。
ゼノグラフト免疫組織学的解析を優先したことにより、ゲノム解析やRNA抽出試薬等の費用が予定を下回ったため差が生じた。免疫組織学的解析はほぼ終了したため、来年度に本年度未実施分を合わせて予定数のゲノム解析を行う予定である。
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Oncology Letters
巻: 14 ページ: 3633~3640
10.3892/ol.2017.6633