研究課題
本研究の目的はヒト膵癌マウス肝転移モデルを用いて、膵癌肝転移・浸潤における分子制御機構を明らかにすることであった。我々はこれまで膵癌細胞におけるZNF185発現には細胞膜、細胞質、核発現があることを発見しており、マウス肝転移モデルを用いて免疫組織学的に解析した。細胞内発現のみならず、腫瘍内においても発現の違いがあり、腫瘍先端部の細胞膜発現パターンが腫瘍浸潤能を最も反映するマーカーであることを発見した。これらを臨床症例においても統計学的に検証した(Oncol Lett 14: 3633-3640, 2017)。また、臨床症例に限りなく近いがん患者由来ゼノグラフト(PDX)用いた実験を行った。膵癌株PDXをNOGマウスに移植し、ゲノム解析結果およびインタラクトーム(相互作用)解析を行った。膵癌の相互作用プロファイルは非常に多様性があり、これまで我々が発表してきた大腸癌や肺癌とは大きく異なる結果であった(AACR2017, ESMOasia2017)。この膵癌の相互作用多様性が治療抵抗性、難治性の原因であることが考えられ、それゆえに個別化医療への応用が望まれる。膵癌PDXの早期樹立および解析により、最も効果的な抗がん剤・分子標的薬の選択が可能となる。この個別化医療に対応するPDXの樹立はいまだ困難も多い。PDX樹立失敗の一因にヒトリンパ球増殖状態(LPL)の発生がある。時間の限られているがん個別化医療の実現ためには、LPLの予防が必要であるがいまだ有効な方法がない。我々はLPLにはLymphotoxin-alpha関連の相互作用が強いことを発見し、これらの相互作用を抑制するFK506等の薬剤にてLPLの増殖を抑えうることを発表した(AACR2018)。今回の研究は、PDXを用いた膵癌転移・浸潤機構のZNF185解析による個別化医療を実現させる可能性を示すものである。
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