研究代表者が開発したNOG hIL-3/GM-CSF Tgマウス(hIL3/GM Tg)はヒトマスト細胞、好塩基球の分化効率が高く、in vivoでこれらの脱顆粒を惹起できるヒトアレルギーモデルマウスである。本研究ではこれまでに、hIL3/GM Tgへ好酸球を誘導するIL-5遺伝子を導入したhIL3/GM/IL5 triple-Tgマウスを作製し、ハウスダストマイト(HDM)またはIL-33の気管内投与によるヒトアレルギー性喘息モデルの確立を試みてきた。hIL3/GM Tgまたはtriple TgマウスにヒトIL-33を投与したところ、肺胞洗浄液中に多量のヒトT細胞、マスト細胞など炎症性細胞の浸潤やゴブレット細胞過形成、ペリオスチンの亢進が認められ、ヒトIL-13やIL-5が顕著に亢進した。またtriple Tg マウスの気管支では多数のヒト好酸球浸潤が認められた。さらに抗ヒトIL-13抗体を投与して喘息病態が改善されるか、すなわち抗体医薬の治療モデルとして利用可能か検討したところ、T細胞、好酸球などのヒト細胞浸潤、ゴブレット細胞過形成、ペリオスチン産生が阻害され、喘息病態が顕著に改善された。最終年度である平成30年度は、hIL3/GM TgおよびhIL3/GM/IL5 triple-Tgマウスにおけるヒト好酸球の脱顆粒および気道過敏性を解析した。IL-33投与後に好酸球顆粒の一つであるEDNを測定したところ、triple-TgマウスのBAL中で顕著に産生が亢進していた。またメサコリン吸入後の気道過敏性は、IL3/GM Tgおよびtriple-Tgの両者で亢進することを確認した。以上の結果から、本研究にて開発したヒト化気管支喘息モデルマウスは、創薬の薬効評価前臨床モデルとして利用できる可能が考えられた。本研究成果は、平成30年度に国際誌に報告した。
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