研究課題
近年、抗CTLA-4抗体および抗PD-1抗体が癌の治療薬として承認され有望な成績をあげており、癌の新たな治療法として癌免疫療法が脚光をあびている。申請者は腫瘍免疫にフォーカスを当て研究しており腫瘍微小環境にIL-4というサイトカインの産生が上昇していることを見いだした。このIL-4が癌の抑制性の免疫を誘導していることを発見し、このシグナル経路を阻害すると抗腫瘍免疫が増強することを確認している。IL-4分子をターゲットとした創薬は作用機序も新しく、臨床使用での効果も期待されマウスを使用したトランスレーショナルな研究を経て、新たな癌免疫療法の開発につながるものと考えている。1. 腫瘍内でIL-4が産生していることを確認しマウスを使った解析によりIL-4を産生するのは濾胞性T細胞であることを突き止めた。このIL-4を産生できなくする遺伝子改変マウスでは腫瘍の微小環境を変化させ抗腫瘍免疫の増加を認めた。このことはアメリカ癌学会の雑誌に受理され発表された。2.このことから治療への応用を考え担癌マウスへの抗IL-4中和抗体の投与を行った。抗IL-4抗体は腫瘍微小環境を変化させ抗腫瘍免疫を増加させた。腫瘍の増大も抑えられた。興味深いことに他の免疫療法を組み合わせると治療効果に相乗効果が認められた。これについても腫瘍免疫の国際雑誌に受理され発表された。3.当科で集められ解析された大腸癌患者マイクロアレイデータベースの免疫学的な検討を行った。興味深いことにある群では免疫細胞の活性化と強い浸潤傾向が認められた。このとは抗PD-1抗体等の免疫療法の効果が期待できさらに深く解析することにより治療のターゲットを探索できる。
2: おおむね順調に進展している
上記1-3の全てにおいて順調に進行している。1に関してはアメリカ癌学会の雑誌にアクセプトされた。2に関しては国際的な癌免疫雑誌にアクセプトされた。3に関しては内科学会、癌治療学会で報告している。
このまま解析を続けていく予定である。
理由としてはマウスの供給が追いつかず実験が当初の計画より遅れてしまった。使用計画としては昨年予定していたマウスの実験を行い未使用額を使用する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
Sci Signal.
巻: 11(511) ページ: eaan0790.
10.1126/scisignal.aan0790.
Cancer Immunol Immunother.
巻: 66(11) ページ: 1485-1496
10.1007/s00262-017-2043-6.
PLoS One.
巻: 12(6) ページ: e0179694.
10.1371/journal.pone.0179694.
巻: 12(5) ページ: e0176972.
10.1371/journal.pone.0176972.