研究課題/領域番号 |
16K07110
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70463841)
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研究分担者 |
伊佐山 浩通 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70376458)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膵癌 / BMP |
研究実績の概要 |
我々の樹立した変異型Kras発現+TGF-betaⅡ型受容体(Tgfbr2)ノックアウト(KO)による 膵発癌マウスは、ヒト膵癌の発癌過程と組織像をよく再現する。一方、同じTGF-betaシグナルながら、変異型Kras発現+Smad4のKOでは嚢胞性膵腫瘍が生じる。この相違はSmad4を共有するBone morphogenetic protein(BMP)シグナルに依存する可能性がある。本研究では、Kras+Tgfbr2 KOモデルにおいてBMPⅡ型受容体(Bmpr2)をノックアウトすることにより膵癌の発癌進展におけるBMP シグナルの寄与とそのインパクトを検証し、膵癌制御の新たな機序を明らかにすることを目的としている。 我々はこれまでにBMPシグナルが膵発癌のごく早期におけるacinar-ductal metaplasiaを促進し、また進行期における生体内での腫瘍増殖にも促進的に作用するという知見を得ている。 今年度は、Kras+Tgfbr2 KOモデルにおいてBmpr2を膵臓上皮特異的にノックアウトするために、Bmpr2 flox/floxマウスを自施設内に導入・個体化し、多段階の交配手順を開始した。個体化されたBmpr2 flox/wtをTgfbr2 flox/floxと交配し、Tgfbr2 flox/wt;Bmpr2 flox/wtを多数得た。これをさらにTgfbr2 flox/floxと交配し、Tgfbr2 flox/flox;Bmpr2 flox/wtが含まれる産仔が現在得られてきている。 一方、in vitroの細胞接着アッセイにおいて、Bmp7強制発現膵癌細胞では細胞接着能が増強し、その細胞でP-Selectinをノックダウンすると接着能が低下した。したがって、BMPシグナルによる細胞接着能の増強は接着因子P-Selectinに依存することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のメインとなるマウスの多段階の交配については、Bmpr2 flox/wtマウスの導入後、順調に目的の遺伝子型が得られ、交配のステップが進んでいる。 BMPシグナルの膵癌進展機序への関与についても、これまでに得られた結果を機序として説明し得る知見が加わっており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらにBmpr2 floxとの交配の段階を進めていき、Ptf1a cre/+;LSL-Kras G12D/+;Tgfbr2 flox/flox;Bmpr2 flox/floxを得て、その表現型を精査する予定である。 また、BMPシグナルの膵癌進展への寄与についても、細胞接着・腹膜播種の観点からin vivo, in vitroにおける機能的解析を進める予定である。
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