研究課題/領域番号 |
16K07116
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岩崎 良章 岡山大学, 保健管理センター, 教授 (00314667)
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研究分担者 |
笠井 智成 岡山大学, 自然科学研究科, 特別契約職員(講師) (30530191)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 人工多能性幹細胞 / 肝がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
われわれが確立した人工多能性幹細胞(iPS細胞)からがん幹細胞モデルを作製する手法を用いてがん幹細胞を作製し、さらに肝がん幹細胞への分化誘導を行った。すなわち、マウスiPS細胞をヒト肝がん細胞株の培養上清を用いて培養することにより、がん幹細胞を誘導した。このがん幹細胞をヌードマウスの皮下に移植し腫瘍形成させた。同腫瘍の免疫組織学的解析によりGFP陽性の幹細胞を含む胚細胞性腫瘍の組織像とそれより様々に分化したと考えられる腫瘍組織の形成を確認した。さらに同腫瘍より得られた初代培養細胞の解析により、胚様体形成能および幹細胞マーカー発現を認め、がん幹細胞モデルの樹立を確認した。この確立されたがん幹細胞を一連の成長因子(アクチビン、FGF2、HGF)を用いて肝細胞系へと分化誘導することにより作成した細胞において、肝細胞特異的遺伝子発現(AFP、アルブミン)を確認した。続いて、この肝細胞系へと分化誘導した細胞をヌードマウスの腸管に移植することにより、肝に腫瘍形成を認めた。同腫瘍から作成した初代培養細胞の胚様体形成能および幹細胞マーカー発現を認め、がん幹細胞の存在を確認した。しかし、形成された腫瘍の組織解析では腺管上皮を含む種々の分化した組織を認めたが、高度に分化した肝細胞様の組織には乏しかった。そこで、がん幹細胞の分化過程において、胚様体、胚体内胚葉、肝細胞様細胞の各分化過程において肝がん細胞株の培養上清を用いて培養し、肝細胞様に分化したがん幹細胞を効率的に得られる方法を検討し、胚体内胚葉からの肝がん細胞株培養上清の添加が最も適していることを見出した。さらに、分化誘導した細胞から肝がん幹細胞表面マーカーを用いて、肝がん幹細胞に分化した細胞集団をより特異的に選別・濃縮することに成功した。現在、この細胞群をヌードマウスの門脈を介して移植することにより腫瘍形成を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作成したがん幹細胞を増殖因子により分化誘導することにより、肝がん幹細胞モデルの作成に成功しており、さらに動物モデルとしての免疫不全マウスにおいて腫瘍形成に成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
新しく見出した肝がん幹細胞の誘導法を用いて、効率的に肝がん幹細胞モデルを量産する。これを種々の肝がん幹細胞マーカーを用いて更に選別してより高濃度かつ均一な肝がん幹細胞群を得ることにより、効率的な肝がん幹細胞動物モデルの作成を目指す。肝細胞系への分化誘導法については、成長因子の他に種々のシグナル伝達阻害剤を用いた分化誘導法によるより特異的かつ効率的な肝細胞系細胞への誘導の応用を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
作成したがん幹細胞モデルからの肝がん幹細胞への増殖因子を用いた分化誘導自体は予定より順調に進み、肝がん幹細胞モデルの作成に至ることが出来た。そのため、当初予定していた各種増殖因子の使用量が予想を下回った結果、次年度への繰り越しが発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、細胞の選別のための幹細胞特異的表面抗原に対する抗体及び磁気ビーズ、新たな分化誘導法のためのシグナル伝達阻害剤、動物モデルとしての免疫不全マウスの購入に使用を予定している。
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