研究課題/領域番号 |
16K07118
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小林 大樹 熊本大学, 生命科学研究部, 特任助教 (20448517)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TCTP / 神経線維腫症1型 / 翻訳伸長因子 / EF1A2 |
研究実績の概要 |
神経線維腫症1型(NF1)は神経線維種や悪性腫瘍をはじめとする、多彩な病態を示す遺伝性疾患である。その原因遺伝子産物Neurofibrominは、Ras-GAP相同領域を有し、その欠損によるRasを介した細胞内シグナル伝達異常は、神経系細胞増殖と分化異常による悪性化を誘発すると考えられるが、その詳細な分子機序や病態マーカーおよび治療標的は報告されていない。NF1病態発現機構解明を目的として、NF1発現抑制によるNF1病態モデル細胞を構築し、細胞内異常発現分子群を融合プロテオミクスにより網羅的に解析した結果、Translationally controlled tumor protein (TCTP)を中心とした新規NF1病態関連分子ネットワークがNF1腫瘍の発症・進行に関与すると考えられた。また、TCTPは翻訳伸長因子複合体(EF1A1、EF1A2、EF1B、EF1D、EF1G、VARS)と有意に結合していることが判明した。特に、TCTPはEF1A2との特異的相互作用をコアとした翻訳伸長因子群と複合体を形成することによって、NF1腫瘍細胞内のタンパク質翻訳を促進していることが示唆された。また、siRNAを用いたEF1A2の機能阻害により、MPNST細胞の増殖能、およびタンパク質の翻訳活性が低下した。さらに、EF1A2の機能阻害によりタンパク質翻訳関連分子群の発現が減少することをプロテオーム解析によって見出した。TCTPに結合するアーテスネートはTCTP-EF1A2に相互作用し、翻訳伸長反応を抑制することが判明した。以上のことから、TCTPはEF1A2と特異的に相互作用し、EF1A2を主体したタンパク質翻訳伸長反応を活性化することによって、NF1腫瘍の病態を進行させていることが考えられた。その機能阻害がNF1腫瘍の治療ターゲットとして有効であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現段階で、神経線維腫症1型腫瘍におけるTCTPによる翻訳活性化機構を詳細に解析し、その翻訳活性化により発現上昇される分子ネットワークの同定に成功している。現在、これらのデータを国内外の学会で発表し、論文として発表する準備段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
1. 免疫組織染色法によってNF1腫瘍組織におけるTCTPと腫瘍促進シグナル分子群の発現状態の関連性を解析し、これら分子群のNF1腫瘍にバイオマーカーとしての有用性を評価する。 2. すでに樹立したNF1腫瘍性細胞および非腫瘍性細胞を用いて、翻訳活性化分子群の細胞内局在を共焦点レーザー顕微鏡およびタイムラプス顕微鏡にて経時的に解析する。また、薬剤、発現プラスミド、siRNA/shRNA等を用いて、NF1腫瘍化促進シグナル分子群の機能を抑制、あるいは活性化させたNF1腫瘍性細胞および非腫瘍性細胞の細胞周期、形態、運動能等を解析し、NF1腫瘍促進シグナル分子群の役割を生化学的、細胞生物学的に検証する。 3. NF1腫瘍促進シグナル分子群の治療標的として有用性を評価するため、NF1欠損細胞、NF1腫瘍由来細胞およびNF1モデルマウスの腫瘍組織内において、シグナル分子群の機能を阻害し、増殖・形態・運動能・腫瘍形成等に及ぼす効果を検証する。検証結果をもとに、最も効果の高いNF1腫瘍促進シグナル分子群の阻害方法を検討し、最適なNF1腫瘍の新規治療法開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施した実験結果から、いくつかの実験で来年度に併せて実施することが望ましいと考えるものがあり、物品費等の繰り越しを行った。大学の雇用形態により他の予算を使用したため、旅費に関して繰り越しを行った。実験を進める上で研究員を雇用した。
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