研究課題/領域番号 |
16K07123
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
高宮 里奈 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70365419)
|
研究分担者 |
鈴木 拓 札幌医科大学, 医学部, 教授 (20381254)
大坪 和明 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (30525457)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | がん糖鎖 / 三次元培養 / メチル化 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
昨年度の成果より、がん悪性化と符合するsialyl-Tn糖鎖抗原発現(sTn糖鎖抗原(+))がん細胞では細胞周期に影響がある可能性が示唆された。そこで、FACSを用い細胞周期について解析を行った。sTn糖鎖抗原(+)がん細胞では、G1からS期への移行が遅延することにより、細胞増殖の低下を示していた。HumanMethylation450 BeadChipを用いた、メチル化/発現アレイデータとの比較解析より、sTn糖鎖抗原(+)がん細胞では、sTn糖鎖抗原(-)がん細胞に比べて、G1/S期に関わるcyclin D2 のメチル化の変動、発現低下が認められた。 次に、三次元培養下におけるsphere形成過程におけるsTn糖鎖抗原発現がん細胞の性状変化について検証を行った。三次元培養は、細胞接着阻止剤コート処理(polyHema コート処理)を行ったプレートを用いた。タイムラプス顕微鏡で観察を行ったところ、sTn糖鎖抗原(+)がん細胞は三次元培養下で見られる細胞同士の接着が低下し、結果sphere形成能が低下していた。そこで、次に細胞増殖について三次元培養を行なった細胞で、MTTアッセイを行なった。その結果、sTn糖鎖抗原発現がん細胞では、三次元培養下では増殖能がsTn糖鎖抗原(-)がん細胞に比べ亢進していた。さらに、三次元培養下の細胞を二次元培養下に戻した時の、細胞の挙動について検討を行った。その結果、sTn糖鎖抗原(-)がん細胞が、sphereを作ったままプレートに張り付いたのに対し、sTn糖鎖抗原(+)がん細胞は、通常の培養時と同様にsphereを作らず接着し、増殖することが認められた。 以上の結果より、sTn糖鎖は、細胞周期やsphere形成に影響を与える分子であることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム/エピゲノム解析より、がん糖鎖により制御を受ける可能性のある細胞周期制御分子を特定することができた。 また、三次元培養下における細胞の挙動を確認することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの検討より、sTn糖鎖抗原は、細胞増殖に寄与するシグナルに影響を与えることを見出した。今後、sTn糖鎖抗原が細胞内糖代謝経路に影響を与えるか検討を行う。方法は、sTn糖鎖抗原(+ or -)がん細胞で、細胞内網羅的糖代謝解析(メタボローム解析)を行う。代謝経路に影響をあたえていた場合、sTn糖鎖抗原により影響を受けた酵素の同定を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
効率的な物品調達を行ったため 予定していた国際学会に参加しなかったため 今回未使用額については30年度予算とともに消耗品や、国際学会参加の費用として使用する予定である
|