研究課題/領域番号 |
16K07124
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
サンペトラ オルテア 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (50571113)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 幹細胞 / グリオーマ幹細胞 / 脳腫瘍 / ニッチ |
研究実績の概要 |
2年以下の生存しか望めない膠芽腫において、その幹細胞(Glioma stem cells:GSC)を標的とした新しい治療戦略が期待されている。GSCの自己複製、未分化能を担保するニッチの阻害はGSCの根絶に繋がると考えられているが、ニッチの特性はまだ十分に解明されていない。これまでの研究で、同一腫瘍内のGSCには酸素への依存性が異なる分画が存在することを見出し、そのことからニッチにも異なる性質のものが存在する可能性があると考えた。本研究では、GSCとニッチのライブイメージングを行い、ニッチが形成される条件、ニッチの種類、性質及び構成成分を明らかにすることを目標とする。さらに、GSCとニッチの相互作用を分子レベルで解析し、GSCの自己複製を阻害しうるニッチ関連因子の同定を目指している。
膠芽腫(Glioblastoma,以降GBM)において血管性ニッチ、低酸素ニッチの存在が報告されている。当該年度においては血管性ニッチの可視化及び特性解析を実施した。腫瘍形成過程の全期間における血管性ニッチの成立時期、局在、構成成分を明らかにするため、マウスの自然発生GBMモデルを用いて、腫瘍形成過程の複数の段階(早期、中期、後期)から培養脳切片を作成し、リアル・タイムで血管を可視化し、腫瘍細胞の血管に対する親和性を評価した。その結果、腫瘍形成早期では血管に向かう腫瘍細胞及び血管に沿って遊走する腫瘍細胞がみられるものの、繊維に沿って遊走している細胞が多いことがわかった。一方、腫瘍塊が存在する時期では、血管に沿って浸潤する細胞が多く確認された。それぞれの切片より腫瘍細胞を単離し、培養維持を行い、現在、各々の分画に含まれる幹細胞の割合を測定している。また、二つの分画の特性解析も開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然発生GBMモデルを用いて、移植モデルでは不可能であった、正常細胞が悪性化する過程の観察、挙動解析を行うことに成功した。以前の研究では腫瘍幹細胞をマウスの脳に移植する場合は移植直後より血管への親和性が高く、血管性ニッチが成立することが分かったが、今回は悪性化途中の細胞では血管への親和性がまだ低いことを示唆する所見が得られた。今後は腫瘍形成過程の初期をさらに詳細することにより、血管性ニッチ成立の具体的な時期が同定できると考えられ、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に続き、血管性ニッチ成立の条件について解析する。また、GSCニッチの構成成分を単離し、細胞成分、液性因子の解析よりニッチ形成の鍵となる分子、マーカーになりうる分子及びGSCの自己複製能を担保するニッチ関連因子を同定する。 さらに、腫瘍細胞が低酸素に曝露されたときに特定の蛍光リポーターを発現するように遺伝子改変を行い、低酸素ニッチの解析を開始する。
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