研究課題
本研究の目的は、化学療法が著効し臨床的治癒に近い経過を示した、極めてまれなIV期肺がんまたは中皮腫症例を集積してその全貌を検討し、IV期肺がんを臨床的治癒に結びつける要因を明らかにし、肺がんのさらなる個別化医療実現へ向けた基盤の確立を目指すことである (臨床試験登録UMIN000037822)。本研究対象症例の選択基準は、1) 病理学的確定診断のあるIV期肺がんまたは中皮腫、2) 年齢20歳以上、3) 化学療法が奏効し(完全寛解CRまたは部分寛解PR)、最終治療終了後2年以上無治療で寛解が維持されていること、4) DNA抽出が可能な治療前の腫瘍検体があること、5) 末梢静脈血の提供が可能であること、6) 研究参加への書面によるインフォームドコンセント、である。過去13年間のデータベースから10例が同定され、6例が本研究に登録された。組織型は肺腺癌3例、小細胞癌2例、中皮腫1例、診断時年齢中央値67歳(58-74歳)であった。保存されているホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織標本を用いて網羅的遺伝子解析、臨床的特徴 (組織型、治療反応性等)との統合解析が進行中である。また、本研究課題と共通するがん遺伝子パネルを用いた次世代シーケンス (NGS) 解析を用いて体細胞変異が肺がん患者の予後に及ぼす影響について検討した。876例の非小細胞肺癌治癒切除症例の腫瘍組織を用いて検討した。172例において2種以上の体細胞変異が検出された。多変量解析の結果、複数の体細胞変異の存在が、病期の進行、高齢とともに優位の無再発生存および全生存に対する予後不良因子であることを明らかにした(Tamiya, Cancer Med, 2020)。
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