研究課題
1) ASPS細胞と血管周皮細胞の相互作用による血管新生機構の解析ASPS細胞が分泌する血管周皮細胞遊走因子の探索を遂行した。ASPSの無血清培養上清をイオン交換カラムクロマトグラフィーにてタンパク質を精製・分画し、得られた各画分の生理活性能を血管周皮細胞に対する遊走能アッセイで確認した。次いで、活性画分に含まれるタンパク質を質量分析器(LC/MSMS)で同定し、機能予測と、解析済みのヒトとマウスASPSの遺伝子発現プロファイルと比較することで、ASPSにおける血管周皮細胞の新規遊走因子として抽出した。これらの因子をひとつずつsiRNAでノックダウンしたところ、血管周皮細胞の遊走活性能は減弱したが、消失には至らなかった。このことから、血管周皮細胞の遊走性の調節には、複数の因子が関与していることが示唆された。2) 融合遺伝子ASPL-TFE3の機能解析と標的遺伝子の同定ASPSの発症において、MiT/TFEファミリー (TFE3/TFEB/TFEC/MITF)の中で、TFE3とTFEB に共通の造腫瘍性ドメインが存在し、MITFとTFECには存在しないことをこれまでの実験で明らかにした。この結果から28年度は、造腫瘍性ドメインに結合する転写共役因子の同定を行った。Hisタグ付きのTFE3とMITFタンパク質を各々、ヒトASPS細胞の核抽出物と混合し、SDS-PAGEで分離後銀染色を行い、TFE3に特異的に共沈するタンパク質を精製、質量分析器にてアミノ酸配列を特定した。現在は、得られたタンパク質について、ヒトとマウスのASPS細胞で、ASPL-TFE3との結合の有無を免疫沈降実験により確認している。
3: やや遅れている
ASPS細胞が分泌する血管周皮細胞遊走因子の候補は同定できたが、候補因子をノックダウンした際の遊走活性化能が顕著に減少しないので、候補は複数なのか、他に見落としている可能性も考えられる。また、血管形成の過程を明らかにするため、血管周皮細胞の遊走をひとつの指標としたが、別のアッセイ方法での検証も必要である。
1) ASPS細胞と血管周皮細胞の相互作用による血管新生機構の解析ASPS細胞が分泌する血管周皮細胞遊走因子の候補は抽出できたが、複数候補の関与が示唆されたことから、複数の遺伝子導入による過剰発現やsiRNAによるノックダウンで、血管周皮細胞及び血管内皮細胞の遊走能をin vitroで評価する。血管形成の過程を明らかにするため、血管周皮細胞の遊走能を指標に解析を進めてきたが、新たな評価方法として、ASPS細胞と血管周皮細胞との接着や、血管周皮細胞及び血管内皮細胞の増殖能を指標とした新たなアッセイ系を構築する。再度、プロテオミクス情報と機能予測、遺伝子発現アレイ解析結果から予想されるサイトカインやケモカインなどを見直し、それら分泌タンパク質の関与についての検討も進める。上記より得られた候補因子について、in vitroで検証した後に、shRNAや抗体・阻害剤の投与により、マウスASPSでの新たな血管新生の縮小や、転移巣の減少をin vivoで評価する。2) 融合遺伝子ASPL-TFE3の機能解析と標的遺伝子の同定ヒト・マウスASPS細胞で、ASPL-TFE3と共役因子の結合を免疫沈降実験により確認した上で、ASPL-TFE3の欠失変異体を作製して結合モチーフを同定する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
Cancer Research
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