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2017 年度 実施状況報告書

胞巣状軟部肉腫をモデルとした血行性転移機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K07131
研究機関公益財団法人がん研究会

研究代表者

田中 美和  公益財団法人がん研究会, がん研究所 発がん研究部, 研究員 (70345883)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードASPL-TFE3 / MiT/TFE family / 染色体転座 / 胞巣状軟部肉腫 / 骨軟部腫瘍 / 血管新生 / 転移 / HIF-1a
研究実績の概要

(1) 胞巣状軟部肉腫(ASPS)細胞と血管周皮細胞の相互作用による血管新生機構の解析
ASPSは、豊富で成熟した血管新生を伴う腫瘍細胞の胞巣状パターンと血行性肺転移が特徴である。腫瘍細胞による血管周皮細胞の遊走や接着を介した血管構築機序を明らかにするため、ASPS細胞が分泌する血管周皮細胞の遊走因子の探索を行った。今回行ったプロテオーム解析は、ASPS細胞の培養上清に対する血管周皮細胞の遊走を指標としており、解析の結果、候補分子を4つに絞った。一方で、血管周皮細胞の培養上清に対してもASPS細胞の遊走がみられた。

(2)融合遺伝子ASPL-TFE3の機能解析と標的遺伝子の同定
ASPSの発症において、MiT/TFEファミリー(TFE3, TFEB, TFEC, MITF)の中で、TFE3とTFEBに共通の造腫瘍ドメインが存在し、MITFとTFECには存在しないことがこれまでの実験で明らかになっている。平成29年度は、TFE3の造腫瘍性ドメインに結合する転写共役因子Xについて検証を行った。XとTFE3との特異的な結合の有無を免疫沈降実験によって確認したが、MITFにも結合していることが判明した。しかし、Xの結合部位を欠損させたTFE3変異体では造腫瘍性が認められなかったことから、TFE3特異的ではないが、腫瘍形成には重要なドメインであることが示唆された。引き続き、TFE3特異的な造腫瘍ドメインの探索を進める。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

胞巣状軟部肉腫(ASPS)の血管新生における責任分子の同定と、融合遺伝子ASPL-TFE3の機能ドメイン及び共役因子の同定を目指している。探索に必須なプロテオミクス解析やゲノム/エピゲノム解析が概ね順調に進んでいるため、スクリーニングのヒントとして大いに活用できている。このため、候補分子の検証の実験に注力し本課題を進めたい。

今後の研究の推進方策

(1) 胞巣状軟部肉腫(ASPS)細胞と血管周皮細胞の相互作用による血管新生機構の解析
ASPS細胞が分泌する4つの候補遺伝子について、siRNA/shRNAや阻害剤で発現を抑制した際の、ASPSと血管周皮・内皮との遊走能や接着能、血管侵襲能、肺転移能の低下をin vitro及びin vivoで検証する。
一方で、ChIP-seq解析と遺伝子発現プロファイルから、ASPL-TFE3の標的遺伝子であるHIF-1aにも着目している。低酸素でASPS細胞を培養するとHIF-1aが顕著に亢進されることから、HIF-1aを介した血管新生機構の解析も進める。

(2) 融合遺伝子ASPL-TFE3の機能解析と標的遺伝子の同定
引き続き、TFE3特異的な造腫瘍ドメインと共役因子の同定を進める。データベースサーチよりTFE3のみが有しているモチーフを見出した。ここに結合する可能性のあるタンパク質について、これまでのプロテオーム解析結果と比較し、結合の検証実験を行う。次いで、このモチーフの置換変異体や共役因子のノックダウンの系を用いて、標的遺伝子の発現変化や腫瘍形成能の減少を検討する。ASPL-TFE3の標的遺伝子の発現制御機構を明らかにすることで、ASPSの発症と悪性化の分子基盤の理解に繋げたい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] A double-edged sword: The world according to Capicua in cancer.2017

    • 著者名/発表者名
      Tanaka M, Yoshimoto T, Nakamura T.
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 108(12) ページ: 2319-2325

    • DOI

      10.1111/cas.13413.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] miR-214 cooperates with SS18-SSX1 in malignant progression of Synovial sarcoma.2017

    • 著者名/発表者名
      Miwa Tanaka, Yukari Yamazaki, Mizuki Homme, Takuro Nakamura
    • 学会等名
      第106回 日本病理学会総会
  • [学会発表] 滑膜肉腫における腫瘍微小環境に対するマイクロRNAの役割2017

    • 著者名/発表者名
      田中美和、山崎ゆかり、本目みずき、中村卓郎
    • 学会等名
      第50回 日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会
  • [学会発表] Molecular dissection of ASPSCR1-TFE32017

    • 著者名/発表者名
      Miwa Tanaka, Mizuki Homme, Yukari Yamazaki, Yui Sakaida, Rikuka Shimizu, Takuro Nakamura
    • 学会等名
      第76回 日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 田中美和、山崎ゆかり、本目みずき、清水六花、中村卓郎2017

    • 著者名/発表者名
      胞巣状軟部肉腫の原因融合遺伝子ASPL-TFE3の機能解析
    • 学会等名
      金沢大学 がん進展制御研究所・成果発表会
  • [学会発表] 骨軟部腫瘍の動物モデル開発と発がん・転移機構の解析2017

    • 著者名/発表者名
      田中美和
    • 学会等名
      第139回 御茶ノ水がん学アカデミア
    • 招待講演
  • [学会発表] 融合遺伝子陽性の骨軟部腫瘍モデルマウスの樹立と発がん機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      田中美和
    • 学会等名
      第63回 日本病理学会 秋期特別総会
  • [学会発表] 胞巣状軟部肉腫の原因融合遺伝子ASPL-TFE3の機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      田中美和、清水六花、寺村易予、本目みずき、山崎ゆかり、中村卓郎
    • 学会等名
      先端モデル動物支援プラットフォーム成果発表会
  • [学会発表] 胞巣状軟部肉腫の原因融合遺伝子ASPL-TFE3の転写制御機構2017

    • 著者名/発表者名
      田中美和、清水六花、寺村易予、吉本豊毅、本目みずき、山崎ゆかり、中村卓郎
    • 学会等名
      第1回 日本サルコーマ治療研究学会学術集会
  • [学会発表] The molecular function of ASPSCR1-TFE3 in alveolar soft part sarcoma.2017

    • 著者名/発表者名
      Miwa Tanaka, Takuro Nakamura
    • 学会等名
      AACR Special Conference on Advances in Sarcomas: From Basic Science to Clinical Translation
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17  

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