研究実績の概要 |
(1) 胞巣状軟部肉腫(ASPS)細胞と血管周皮細胞の相互作用による血管新生機構の解析 ASPSは、豊富で成熟した血管新生を伴う腫瘍細胞の胞巣状パターンと血行性肺転移が特徴である。腫瘍細胞による血管周皮細胞の遊走や接着を介した血管構築機序を明らかにするため、ASPS細胞が分泌する血管周皮細胞の遊走因子の探索を行った。今回行ったプロテオーム解析は、ASPS細胞の培養上清に対する血管周皮細胞の遊走を指標としており、解析の結果、候補分子を4つに絞った。一方で、血管周皮細胞の培養上清に対してもASPS細胞の遊走がみられた。
(2)融合遺伝子ASPL-TFE3の機能解析と標的遺伝子の同定 ASPSの発症において、MiT/TFEファミリー(TFE3, TFEB, TFEC, MITF)の中で、TFE3とTFEBに共通の造腫瘍ドメインが存在し、MITFとTFECには存在しないことがこれまでの実験で明らかになっている。平成29年度は、TFE3の造腫瘍性ドメインに結合する転写共役因子Xについて検証を行った。XとTFE3との特異的な結合の有無を免疫沈降実験によって確認したが、MITFにも結合していることが判明した。しかし、Xの結合部位を欠損させたTFE3変異体では造腫瘍性が認められなかったことから、TFE3特異的ではないが、腫瘍形成には重要なドメインであることが示唆された。引き続き、TFE3特異的な造腫瘍ドメインの探索を進める。
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