日本人の肺がんによる死亡数は年々増加傾向にあり、新しい治療標的分子の同定は喫緊の課題である。研究代表者は本研究課題に先立ち、上皮間葉転換と呼ばれる転移の準備段階にある肺がん細胞が、一次線毛という特徴的な細胞膜構造物を発現することを見出した。本研究課題では、この一次線毛の発現を促進する遺伝子Xを同定した。一方、一次線毛と肺がん細胞の増殖能などが密接に関連することを見出した。一次線毛は臨床検体中にも観察されることから、生体内でも重要な役割を果たす可能性がある。今後は、現在作出中の遺伝子改変マウスを用いて遺伝子Xの機能を精査し、最終的には一次線毛を標的とする治療法の開発を目指したい。
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