研究課題
本研究では、胃癌のリンパ節における胃癌特異的マイクロRNA発現を検出することにより潜在的な胃癌の悪性度情報を得られると考え、バイオマーカーとしての確立を試みるものである。特に病理学的転移陰性のリンパ節における胃癌特異的マイクロRNA発現を検討する意義は、極めて少数の癌細胞がリンパ管を経由してリンパ節に移行した状態、いわゆる微小転移という病態に加え、原発巣の癌細胞に由来するマイクロRNAが、分泌型などの形でリンパ節にたどり着いたという状態を反映するものと考えている。本研究ではホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片からのRNA抽出とマイクロRNAの検出の安定的で再現性の高い手法を確立するため、予備実験を進めている。FFPEブロックを肉眼的にマーキングのうえで厚めに切り出し、RNAを抽出し、リアルタイムPCRで発現量を測定する一連の作業についてはおおむね確立したと言える。胃癌症例の臨床データベース構築を行っている。また文献検索およびTCGA(The Cancer Genome Atlas)などの大規模な網羅的データ解析により胃癌特異的マイクロRNAリストを作成・絞り込みを行っている。胃癌原発巣を主体とした解析からリンパ節にfocusしていけるかがポイントと考えると、全体としてはいまだ予備的検討段階であるが、有望な候補マイクロRNAが抽出でき、検出が効率的に行えれば意義のある報告につながるものと考えている。
3: やや遅れている
RNA抽出、マイクロRNA測定は確立しているが、病理学的リンパ節転移、あるいはリンパ節転移準備段階といった、非肉眼的なものについてうまく定義づけ解析するにあたりlimitationが生じている。
過去の論文報告や網羅的データ解析などから、候補マイクロRNAの選択と検証を進めつつ、再現性の高いRNA抽出と検出を行う。対象とする標本をリンパ節にこだわらず原発巣についても広く解析を試みる。
当研究室ですでに確立していた手技、消耗品、試薬などを用いたことで、想定より物品費が生じなかったこと、旅費を使用しなかったことで次年度使用額が生じた。次年度の物品費に充当する。
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