研究課題/領域番号 |
16K07149
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川久保 博文 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (20286496)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抗癌剤耐性遺伝子 / 放射線耐性遺伝子 / トランスポゾン / 食道癌 |
研究実績の概要 |
ヒトゲノム上に存在する全ての遺伝子をスクリーニング可能であるトランスポゾンを用いて、食道癌に対するシスプラチン、5-FU、放射線耐性遺伝子の新しい網羅的解析に関する研究において、以下のような研究を施行した。 1. 食道癌細胞においてTransposon tagged cellの樹立した。各種細胞へトランスポゾンを用いて、CMVプロモーターとピューロマイシン耐性遺伝子を導入し、ピューロマイシンによるselectionを行い、細胞一つ一つにおいてCMVプロモーターがゲノム上のランダムな位置に挿入された細胞プールである、Transposon tagged cellの樹立した。 食道癌細胞株TE4,5,9,15の他に、KYSE細胞株においてTransposon tagged cellの樹立に成功した。 2. KYSE細胞株での野生型細胞株がシスプラチンで全滅する薬剤濃度を決定した後、樹立したtransposon tagged cell を用いて、その濃度の薬剤を添加した。CMVプロモーターにより薬剤耐性に関与する遺伝子を過剰発現した細胞はsingle cellとして生き残り、3週間程度培養することでコロニーを形成した。KYSE細胞株についてシスプラチン耐性株を獲得した。 3. TE4シリーズで同定された37種類のシスプラチン耐性遺伝子37のうち薬剤耐性と関係のありそうなTRIM16Lに関してReal time PCRにて遺伝子のoverexpressionを認めた。 TRIM16 overexpression細胞株と野生型細胞株にシスプラチンを暴露し、シスプラチン耐性をMTT assayにて検証し、シスプラチンへの耐性を証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスポゾンを用いた網羅的遺伝子解析の手法によって37の候補遺伝子が同定され、その中にはMRP1 (Multidrug resistance protein1)を含んでおり、既知の耐性遺伝子を含んでいることより、この実験手法が十分に機能していることが確認できた。候補遺伝子のうちJAK2遺伝子に関してはReal time PCRにて遺伝子のdown expressionを認めた。TRIM16に関して実際にReal time PCRにて遺伝子のoverexpressionを認めた。
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今後の研究の推進方策 |
同定したTRIM16遺伝子が実際に薬剤耐性遺伝子であることの確認する。 1. 耐性遺伝子を食道細胞野生株へ導入し、シスプラチン耐性が生じるか否かを検証する。 2. 耐性遺伝子を有する食道細胞野生株からsiRNAにて遺伝子をknockdownし、シスプラチンへの感受性が上がるかを検証する。 3. マウスxenograftでの薬剤耐性の判定。食道癌野生株と、耐性遺伝子を導入した治療耐性株のマウスxenograftモデルを作成し、シスプラチンによる治療効果を判定する。 4. 臨床検体における遺伝子発現状況と薬剤効果との相関を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
効果的な物品調達を行い、まだ調査研究費、成果報告する段階ではないため、費用としての国内国外旅費、謝金、その他の支出を最小限としたため。翌年度のマウスの購入費用、抗体試薬費用、細胞培養機器、培養液などの購入費用、調査研究費、成果報告費用として国内国外旅費に充てる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は主にin vitroと動物モデルを用いた研究を行う。食道癌野生株と、耐性遺伝子を導入した治療耐性株のマウスxenograftモデルを作成し、シスプラチンによる治療効果を判定する。また臨床検体における遺伝子発現状況と薬剤効果との相関を評価する。そのため、マウスの購入費用、抗体試薬費用、細胞培養機器、培養液などの購入費用が主となる。調査研究費、成果報告費用として国内、国外旅費を計上する。また謝金、その他は必要最小限とする見込みである。
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