研究課題/領域番号 |
16K07150
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
坂井 和子 近畿大学, 医学部, 講師 (20580559)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エキソソーム / 非小細胞肺癌 / 融合遺伝子 |
研究実績の概要 |
本年度は、エキソソーム単離の検討を行なった。まず、培養細胞株の培養上清を用いた検討として、EML4-ALK融合遺伝子を発現する癌細胞株であるヒト由来肺癌細胞株H2228およびH3122を用いて検討を行なった。融合遺伝子を発現しない癌細胞株として、ヒト由来肺癌細胞株A549およびPC-9を用いた。これらの細胞株を単層培養し、培養上清からのエキソソーム単離とRNA抽出を行なった。サブコンフルエントに培養した細胞株の培養上清を回収し、フィルターろ過した後、exoEasy Maxi Kitを用いてRNA抽出を行なった。抽出したRNAは、cDNAに逆転写し、EML4-ALKおよびGAPDHの発現を確認した。臨床検体を用いた検討では、血液検体の採取後に血清もしくは血漿を遠心分離し、凍結保存した検体を用いるため、培養上清をいったん凍結保存した状態からのRNA抽出と融合遺伝子発現の確認も行なった。続いて、血漿を用いたエキソソーム抽出の検討として、肺癌細胞株H2228およびH3122のヌードマウス皮下移植モデルを用いた検討を行なった。肺癌細胞をヌードマウス皮下に移植し、腫瘍が増大したヌードマウスの血漿を採取し、エキソソーム単離とRNA抽出を行なった。抽出したRNAから、PCR増幅によるEML4-ALK検出を試みたが、検出されなかった。この原因として、マウスから採取できる血漿量が少ないことや腫瘍増殖が不十分であることなどが考えられたため、血漿採取条件を変更して検討を続けている。次年度の臨床検体を用いた検討に向けての検体収集は継続して進めており、エキソソーム単離とRNA抽出条件を固定した後、臨床検体での検討に進む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エキソソームからのRNA抽出条件については、融合遺伝子陽性の非小細胞肺癌細胞株を用いた検討で概ね良好な結果を得ている。非小細胞肺癌患者の臨床検体を用いた検討では、血清もしくは血漿検体を用いる予定であるため、担癌マウスモデルから採取した血清および血漿を用いた場合の条件の検討を進めている。臨床検体の収集は継続して進めており、研究の進捗は概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌は、肺癌の数%程度の低頻度であり、臨床検体での検出の検討は少数例での試みとなる。貴重な臨床検体から良好な検出結果を出せるよう、可能な限り少量の血清、血漿でエキソソームを単離し、RNAからALK融合遺伝子を検出可能な条件への最適化が必要である。次年度は、臨床検体からの検出条件の最適化に注力し、研究を進める予定である。
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