研究実績の概要 |
本年度は、引き続き、DNAを鋳型として用いるCAncer Personalized Profiling by deep Sequencing (CAPP-Seq)法による血中循環無細胞DNA (circulating cell-free DNA, cfDNA)を用いたALK融合遺伝子の検出を検討した。近畿大学医学部において承認された臨床研究計画に基づき、採取、収集されたALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌3例の血漿検体について検討を行った結果、EML4-ALK融合遺伝子は検出されなかったが、2例でALK遺伝子変異が検出された。これはALK阻害薬の治療後に獲得される耐性獲得メカニズムと考えられた。これまでに実施した6例の血漿1 mLあたりのcfDNA収量は、平均19.5 ng (7.2-49.0 ng)であった。検出された遺伝子異常は、融合遺伝子として、EML4-ALK (1/6, 16.7%), 一塩基バリアント(single nucleotide variant, SNV)として、ALK遺伝子変異(2/6, 33.3%), TP53遺伝子変異(2/6, 33.3%), APC遺伝子変異(1/6, 16.7%)であった。cfDNA収量と遺伝子異常検出との間に関連は認められなかった。ALK融合遺伝子が検出された検体と二次的ALK遺伝子変異が検出された検体は異なるため、対応する腫瘍組織検体での検出を試みたが、腫瘍組織検体を得ることが叶わなかった。以上の結果から、cfDNAを用いたCAPP-seq法による遺伝子解析においては、融合遺伝子検出よりもSNV検出のほうが検出限界の点で優れている可能性が示唆された。本検出系において、融合遺伝子の配列キャプチャーの設計、シークエンス深度および検出アルゴリズムについて改善の余地があると考えられた。
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