研究課題/領域番号 |
16K07153
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
野村 幸男 公益財団法人がん研究会, 経営管理センター 購買・施設部, 総合職 (70714773)
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研究分担者 |
新井 正美 公益財団法人がん研究会, 有明病院 遺伝子診療部, 部長 (20232027)
石塚 直樹 公益財団法人がん研究会, 有明病院 臨床試験部, 副部長 (50392395)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | DNA メチル化 / がん / 高解像度融解曲線解析 / Hypermethylation / Hypomethylation / Liquid biopsy / Mozaicism / 超高感度定量解析 |
研究実績の概要 |
前年度からの研究により、メチル化DNAと非メチル化DNAを1well中で競合的に高解像度融解曲線解析(HRM)し、より高感度化できるようHRMにおける双方のTm差の拡大による良好なピーク分離をもたらして、高感度な定量解析を可能とした。これはメチル化DNA用Primerセット側を高Tm設計することで、せん断されたDNAが想定される臨床材料由来DNA用の100bp以下の短いPCR産物でも、5度以上のTm差をもたらすことに成功したものである。 またそれだけでは大量の正常DNAが存在する検体から、超微量ながん由来DNAを定量するための超高感度な解析は望めないため、超低頻度な非メチル化DNA(1に対してメチル化DNAが1万以上とする)用と、逆に超低頻度なメチル化DNA用の至適化を行った。いずれも現時点で1:10万までの超高感度でかつ、決定係数0.9以上の定量性を持つ解析系を、MLH1とBRCA1のpromoter領域のDNAメチル化解析用に構築することに成功した。 メチル、非メチル化、双方の定量スタンダードは人工遺伝子の形式で、クロスコンタミネーションに十分注意してオリゴメーカーに依頼作成した。 本技術はこの時点で特許出願し、平成29年の日本癌学会にて報告した。 その後、がんを高効率で検出するための遺伝子の選定と解析系の構築を進めている。これまでに、大腸がんのリキッドバイオプシー用の検査キットとしてFDAで唯一認可されているキットに使用されている遺伝子、SEPT9のプロモーター領域について本法での解析系を構築し、BioChain社の市販ヒト大腸がんDNAパネルのBisulfite化パネルにおいて39例中39例のDNAメチル化異常を検出している。それに対して同市販乳がんDNAパネルにおいては、38例中26例の検出率であり、大腸がん検出に有用な遺伝子であることを本法にて検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メチル化DNA:非メチル化DNAの比率が1:10万分子 そして逆に非メチル化DNA:メチル化DNA=1:10万分子程度の超高感度な検出系を作成するにあたり、異常増幅が観察されるようになり、その解消に労力、コスト、時間を費やした。 また、新たなターゲットの選定にあたりPrimerセットの評価系を作成し効率的な作業を可能としたが、特定のCpGサイトを狙って増幅する必要があることでPrimer設定領域が限られることや、新手法であるためPrimer3やPrimerBlastなどのPrimer選定ソフトが使用できず、成功率の高いPrimer設計が難しいこと、などで進捗状況が遅れ気味である。 そのためいまだ、臨床研究を立ち上げるまでに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
これまで本法での解析系の作成に成功している遺伝子に、MLH1、BRCA1、SEPT9、TSPYL1があるが、がん特異的なDNAメチル化異常を示す遺伝子の解析系の構築をさらにすすめ、ターゲット遺伝子のレパートリーを充実させる。そしてそれらで異常を示すことが予想されるがん種の臨床材料と健常な臨床材料を得て比較解析を行い、本法のがん特異的な検出と定量解析の有用性を検証する。 そのための臨床研究を分担研究者と立ち上げ、本手法の開発と実証についての研究成果を英語論文にまとめ世界に発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ターゲット遺伝子の選定に想定以上に時間がかかっており、経費を使用した実験量が思った程できていないことと、学会発表地が近隣であり旅費交通費に想定ほど費やされていないことがあげられる。
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