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2018 年度 実施状況報告書

血漿遊離DNAを用いた小細胞肺癌の新たな低侵襲的診断法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 16K07154
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

梅村 茂樹  国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (80623967)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード小細胞肺癌 / 低侵襲 / 遺伝子解析 / 血漿 / 化学療法 / DNA / 代謝バイオマーカー
研究実績の概要

1. 小細胞肺癌の治療前後の組織検体を用いた遺伝子解析:平成30年度は、化学放射線治療を施行した小細胞肺癌3例において、治療前後の腫瘍組織検体(治療前3検体、治療後3検体、計6検体)を用いて全エクソン解析を施行し、化学放射線治療前後の遺伝子変異プロファイルを比較した。この3例(6検体)において、治療前と治療後の検体の両者で検出された遺伝子変異は、256個であった。小細胞肺癌に特徴とされるRB1の遺伝子変異は、3例中2例(67%)に認め、いずれも治療前後に共通して認められたため、小細胞肺癌の低侵襲な診断や、治療効果の経時的なモニタリングに有効であると考えられた。一方、治療前には検出されたが治療後には検出されなかった遺伝子変異は40個、治療前には検出されなかったが治療後に新たに検出された遺伝子変異は348個であった。これらは、小細胞肺癌の化学(放射線)治療の耐性機序の解明に有用であると考えられた。
2. データベースの作成:平成30年度も、引き続き臨床情報の収集およびデータベースの構築を実施した。平成29年度までに代謝産物プロファイルが得られている小細胞肺癌症例、および「1. 小細胞肺癌の治療前後の組織検体を用いた遺伝子解析」で治療前後の遺伝子変異プロファイルが得られた症例において、病期、生化学検査値、腫瘍マーカー、化学(放射線)治療レジメン、治療効果、再発の有無、生命予後などの臨床因子を抽出した。
3.小細胞肺癌における血漿を用いた標的遺伝子解析成功に関連する因子の同定:血漿遊離DNAを用いた標的遺伝子解析を実施した小細胞肺癌症例で、腫瘍組織から検出された変異の60%以上を血漿遊離DNAから検出できた症例は、全体の60%であった。これらを標的遺伝子解析成功例と定義したところ、血清LDH高値、血清proGRP高値が、血漿からの標的遺伝子解析成功例に関連した因子と考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

平成30年度までに、血漿検体の遺伝子解析結果、代謝解析結果、治療前後組織検体の遺伝子解析の結果が得られ、血漿からの標的遺伝子解析成功に関連した因子も同定できたため、研究の進捗はおおむね順調である。しかし、遺伝子解析に適した検体の収集や、解析データの統合・解釈に想定以上に時間を要したため、研究期間を1年延長した。

今後の研究の推進方策

急速に進行し、時間をかけた生検の実施が困難な小細胞肺癌に対して、血漿遊離DNAを用いた低侵襲な診断法の開発を目標とする。一方で小細胞肺癌においては、ゲノムバイオマーカーに基づいた分子標的治療は確立されておらず、ゲノムバイオマーカーに基づいた治療開発には限界があると考えられるため、今後はゲノムを超えた、新しい概念に基づいたバイオマーカーの創出が必要と考えられる。したがってゲノムバイオマーカーのみならず、より表現型に近い代謝産物を用いた血漿バイオマーカーの開発も行うことにより、画期的な治療効果予測・副作用予測バイオマーカーを確立し、難治性小細胞肺癌の診断や治療開発に貢献することを目標とする。

次年度使用額が生じた理由

(理由)検体収集および臨床検体の解析が少し遅れたため。

(使用計画)研究全体の進捗には大きな遅れはなく、平成31年度に行う解析や、試薬等の購入に用いる予定である。

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公開日: 2019-12-27  

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