研究実績の概要 |
はじめに、微細構造への抗体の固定化方法の最適化を試みた。研究分担者が開発したデバイス(Maeda Y. et al. Proc Chemical Sensor Symposium. 2015)への抗体の固定化を行った。物理吸着が安定して高密度に固定化できることを明らかにした。さらにこの抗体固定化デバイスを用いて、細胞が分泌するタンパク質も蛍光検出できることを示した。pmolからfmol程度細胞から分泌しているタンパク質であれば、このデバイスで検出することができた。 次に、次世代シーケンサによるRNA-seqの単一細胞解析を実施し、特定の細胞集団で特異的に分泌しているタンパク質を同定した。作製したデバイスを用いて、これら分泌たんぱく質を単一細胞レベルで蛍光検出することができた。このたんぱく質は、TGF-β刺激によって分泌量が増加することがこれまでに分かっている。この分泌量の増加が、特定の細胞集団での分泌量の変化なのか、細胞株における細胞集団の割合の変化に由来するのかを、本研究で作製したデバイス上で明らかにすることを実施中である。 最後に、合成ペプチドとトリプシン消化されたペプチド断片を用いてMSイメージングの性能評価を行った。そこから、このイメージング の検出限界は1ショット当たり10,000~20,000分子であることが示され、5マイクロメートルピッチの解像度のイメージング画像を取得 できることもわかった。MSイメージングの精度を向上するために、キャリブレーションの手法を検討した。標準物質とOrbitrapのlock MSを利用して測定エリア内の質量誤差を1-3 ppm以内に抑制することができた。これにより、目的タンパク質由来のペプチド断片を精度よく検出できる可能性が示された。現在、MSイメージングを用いて作製したデバイス上でのペプチド検出が可能かどうか試験中である。
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