研究実績の概要 |
癌患者血液中の癌細胞由来DNA(ctDNA)の検出は、低侵襲的に腫瘍の状況(異常遺伝子の種類、治療効果など)を把握することを可能にするが、血中遊離DNA(cfDNA)は微量かつ断片化しているので、信頼性の高い解析システムの開発が必須である。本研究では、独自開発した高精度塩基配列変異検出法NOIR-SeqSを改良して、ctDNA解析に特化した解析システムを開発し、その臨床的有用性を検証することを目的とした。 昨年度までに、癌遺伝子群の突然変異ホットスポットを標的とした遺伝子パネルを設計し、血液2mL相当のcfDNAからctDNA変異を検出する解析システムを構築した。その性能評価は、膵癌検体解析用遺伝子パネルと膵癌患者/健常者集団(57人/12人)のcfDNAを用いた解析により行った。癌細胞由来の変異以外に、癌に特異的ではない変異(癌に関与しない体細胞変異や保存試料の損傷など)も検出された為、これらを除く目的で、癌体細胞変異データベースCOSMICを利用した情報学的なフィルター(CV78フィルター)を開発した。改良型NOIR-SeqSとCV78フィルターを組み合わせた変異検出システムの性能は前出とは別の集団(膵癌86人と良性の膵管内乳頭粘液性腫瘍20人)で検証し、臨床検体解析に有用であることを確認した(PLoS One, 2018, 13:e0192611)。 ALK融合遺伝子変異の有無は肺癌患者治療選択のバイオマーカーになっているが、その変異部位(ALKと融合相手遺伝子とのゲノム上での再構成部位)は患者ごとに違っており、上記システムでは対応できず、ALK融合遺伝子変異検索に特化したものを開発する必要があった。今年度はそのシステムの開発・構築を行った。生検検査でALK融合変異陽性とされた肺癌患者群の20血液検体を検証試料として解析し、システムの臨床的有用性を確認した(論文投稿中)。
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