研究課題
B細胞悪性腫瘍の治療のために、イブルチニブなど様々なB細胞受容体シグナル伝達に関与するリン酸化酵素群の阻害剤が開発されている。しかし、その治療効果は、標的リン酸化酵素の発現やリン酸化状態とは必ずしも相関せず、適切な治療薬選択法は確立されていない。B細胞受容体のリン酸化状態を解析することが、治療薬選択に通じる病態メカニズム解明のために重要であるが、B細胞受容体にはリン酸化が可能なチロシン残基が複数存在しているため、定量的に正確な解析を行うためには、各チロシン残基のリン酸化を特異的に検出する抗体の作製が必須であった。前年度までの研究で、我々が新しく作製したB細胞受容体CD79AのY188、CD79BのY196の2つの配列特異的リン酸化抗体は、市販の抗体に比較し、疑似配列や非リン酸化抗原に対する交差反応性が低いことが判明している。そこでH30年度は、我々の取得抗体を用い、各部位特異的にリン酸化のB細胞シグナル伝達における役割を解析した。その結果、種々のB細胞株では刺激後に誘導されるY188とY196残基の部位特異的リン化は、互いに相関して変動する結果が得られた。一方、市販の抗リン酸化Y188抗体では、両残基のリン酸化の変動が相反する場合もあった。この結果は、市販の抗リン酸化ペプチド抗体の反応性が、B細胞受容体のリン酸化だけでなく、リン酸化以外のコンフォメーションも認識し、リン酸化による下流のシグナル伝達因子のリクルート状況などに依存する可能性を示していた。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件)
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