研究課題/領域番号 |
16K07162
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松下 博和 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (80597782)
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研究分担者 |
久米 春喜 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (10272577)
中川 徹 帝京大学, 医学部, 教授 (40591730)
垣見 和宏 東京大学, 医学部附属病院, 特任教授 (80273358)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腎がん / ネオエピトープ / MHC class I 結合予測 / T細胞 / HLA-A2 トランスジェニックマウス / IFN-gamma |
研究実績の概要 |
遺伝子変異由来のアミノ酸変異を伴ったネオエピトープが腎がんの抗腫瘍効果、臨床効果に関与しているというproof of concept(POC)を得て、それをターゲットにした腎がん免疫治療を開発することが目的である。当院で実施中の臨床試験「腎細胞がんに対する樹状細胞ワクチン治療の安全性と有効性の評価」に登録され、腫瘍ライセート導入樹状細胞ワクチンを受けた患者のエクソーム/RNAシーケンスのデータから、我々の構築してきたネオエピトープ予測アルゴリズムにより、候補ネオエピトープを選択し、実際にそのネオエピトープが免疫反応を引き起こすか検証する。腫瘍ライセートに対する免疫反応、予後がわかっているワクチン治療症例を用いてこの検証作業を行うことで、我々のネオエピトープ予測アルゴリズムを更に改良し臨床応用に繋げる。 これまで、8例の腎がんのエクソーム/RNAシーケンスのデータから、MHC結合予測アルゴリズムにより、候補ネオエピトープを同定しペプチドを合成した。ペプチドに対する免疫反応を、まずはHLA-A2トランスジェニックマウスを用いてスクリーニングした。5例のHLA-A2患者を対象として、HLA-A2拘束性のネオエピトープを121個合成した。これらのネオエピトープぺプチドでマウス脾細胞を刺激し、IFNgの産生を検討したところ、21個のペプチドで強い反応が検出された。その21個のペプチドに対するヒト正常人PBMCの免疫反応を、人工抗原提示細胞等を利用したin vitroのアッセイシステムで検討した。PTEN遺伝子変異由来のネオエピトープに対して反応を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
樹状細胞ワクチンを受けた患者から免疫系の標的となるネオエピトープを同定する準備段階として、まずHLA-A2トランスジェニックマウスを用いた検討を行った。HLA-A2トランスジェニックマウスの脾細胞と合成ネオエピトープペプチドを共培養することで、ペプチド特異的免疫反応の検出を試みたところ、121個のHLA-A2拘束性のネオエピトープのうち21個で反応を認めた。さらに、ヒト正常人PBMCを用いた検討において、PTEN変異由来ネオエピトープに対する免疫反応を認めた。頻度の低いヒト末梢血中のネオエピトープ特異的T細胞が検出可能な培養法とアッセイ法を確立できた。またこのアッセイ法のポジティブコントロールを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、8例の腎がんの候補ネオエピトープを同定しペプチドを合成した。その中で、HLA-A2トランスジェニックマウス脾細胞、ヒト正常人PBMCを用いて、HLA-A2拘束性のネオエピトープに対する免疫反応を検討してきた。この過程で、ヒトのPBMCから頻度の低いネオエピトープ特異的T細胞を検出する、人工抗原提示細胞を用いた培養法およびアッセイ法を確立できた。またこのアッセイ法のポジティブコントロールを得ることができた。今後は、HLA-A2のみならず、他のHLA由来のペプチドに対しても、この方法法を活用して、腫瘍ライセート導入樹状細胞ワクチンを受けた患者凍結末梢血からペプチドに対する免疫反応を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等の消耗品を安価で購入ができたため、残額が生じた。 最終年度の研究のとりまとめに際しての経費に使用する予定。
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