研究課題/領域番号 |
16K07165
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 律子 金沢大学, 医学系, 助教 (20632657)
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研究分担者 |
尾山 武 金沢大学, 医学系, 助教 (00515314)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 乳癌 / 浸潤 / NELL |
研究実績の概要 |
本研究では腎癌由来細胞株の移動を抑制したNeural EGF like (NELL)という分泌型蛋白質について、癌細胞移動・浸潤抑制に関わるメカニズムについて解析している。NELLはドメイン構造を有する蛋白質でヒトではNELL1とNELL2が知られている。本年度はNELLの発現分布を明らかにするため複数の臓器で免疫染色を施行した。乳腺での特徴的な発現パターンを認めたため乳腺および乳癌について詳しく検討することとした。金沢大学で手術された乳癌検体109例をNELL1、NELL2およびNELL2のレセプターとして報告されたRoundabout guidance receptor 3 (ROBO3)に対する抗体を用いて免疫染色を施行した。その結果、NELL2は筋上皮で、NELL1とROBO3は乳管上皮、小葉上皮での染色性が認められた。非浸潤性乳管癌においてもNELL2は筋上皮で染色を認めたものの、非癌乳腺と比較し染色性は減弱していた。ROBO3は非浸潤性・浸潤性乳管癌で非癌乳腺よりも染色性の低下を認めた。NELL1は非癌乳腺と非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌いずれも優位な発現の相違は確認されていない。乳腺の筋上皮でNELL2を認めたことをふまえて、乳癌細胞株に対するNELL2の細胞接着・細胞移動への影響を調べた。昨年度はNELLの野生型および各ドメインのみを発現するプラスミドを作成、培養細胞株にて蛋白質を発現させ抗体カラムで精製したが、本年度はNELLのC末端を欠損させた蛋白2種類を追加作成した。野生型NELL2は乳癌細胞株の細胞接着・移動ともに抑制傾向を認めたが、各ドメインの機能の詳細は現在調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非癌乳腺組織および乳癌におけるNELL1, NELL2, ROBO3の発現傾向を確認することができた。培養細胞でのドメイン機能解析もNELLの細胞移動に対するおおよその傾向は得られている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き乳癌細胞株を用いてNELLのドメイン機能解析を行う。NELLは分泌蛋白質のため、免疫染色でみられた染色部位と発現細胞が一致しているとは限らない。NELLのmRNAを産生している細胞を明らかにするため、in situ hybridization を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より試薬を安価に購入できたことにより次年度使用額が生じた。 本年度予算と合わせて試薬、消耗品、学会出張費、論文出版などに使用する予定である。
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