研究実績の概要 |
本研究ではNeural EGFL like (NELL)という分泌型蛋白質について、癌細胞移動・浸潤抑制に関わるメカニズムを解析している。昨年度はNELL2の正常乳管の筋上皮、そのレセプターであるRoundabout Guidance Receptor 3 (ROBO3) の乳管上皮・乳癌細胞での発現を確認した。乳管での筋上皮と乳管上皮の位置関係から、リガンド・レセプターの反発作用による細胞の住み分けを推測し、NELL2の機能解析を乳癌培養細胞株にて施行した。In vitro での細胞接着を調べるため、全長NELL2蛋白質をコートした培養皿上への乳癌細胞株を撒いたところ、培養皿への接着性はコントロールと比較し低下した。NELL2の各ドメイン(Thrombospondin-1(TSP), N側Cysteine-rich(CR), EGF-like, C側-CR)のみをコートした場合、TSPでは接着細胞数は増加した。これよりTSPは乳癌細胞表面蛋白質との結合に関与していると推測されるが、全長NELL2で生じた接着性の低下の説明がつかない。そこでTSPからN側CRまで、およびTSP、N側CR とEGF-likeまでを含むコンストラクトを作成し同様の実験を施行したところ、後者で優位に細胞接着性の低下がみられた。これより、細胞表面への蛋白質に直接結合するドメインと、その後の接着性低下(反発作用)を誘導するドメインは異なるのではないかと推測した。ROBO3に関してはqPCRにて発現量に差はあるものの、使用した4種の乳癌細胞株で発現は確認された。しかし既報告ではNELL2のEGF-likeドメインがROBO3との結合性を示しており、本研究とは異なる領域となるためNELL2には別のレセプターが存在するのではと考えている。
|