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2016 年度 実施状況報告書

遠隔転移腫瘍に対する腫瘍溶解ウイルスを用いた新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K07166
研究機関名古屋大学

研究代表者

五島 典  名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (70201499)

研究分担者 江崎 伸一  名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (20620983)
木村 宏  名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (30303621)
渡邉 大輔  愛知医科大学, 医学部, 教授 (40324404)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード腫瘍溶解療法 / 単純ヘルペスウイルス / HF10 / アンプリコン / 遠隔転移腫瘍
研究実績の概要

本研究では、動物モデルを作成してHF10とIL2アンプリコン(IL2amp)によるマウス転移性腫瘍への治療効果を検討した。
まず皮下-肺腫瘍モデルを作成するために、尾静脈接種により肺腫瘍が作成されるかどうか検討した。マウス扁平上皮癌細胞株SCC-VII、マウス乳癌細胞株4T1-lucを静脈注射した。マウス大腸癌細胞株CT26を用いたモデルと同様に、一定期間を過ぎるとマウスの体重減少が観察された。るいそうが著明になった時に肺を観察したところ、肺表面に腫瘍の形成が認められた。しかし、個体差による生存期間の差が顕著であった。
次にSCC-VII、4T1-lucをマウス背部両側に接種し、多発皮下腫瘍モデルを作成した。皮下腫瘍が5mmに達したところで片側のみ2日おき3回腫瘍内にHF10及びIL2ampを接種した。SCC-VIIを用いたモデルでは治療側、未治療側共に、有意な腫瘍の成長効果が認められたが、いずれの治療群でも35日以後に腫瘍の増大が認められ、生存日数を有意に延長することはできなかった。4T1-lucを用いたモデルではHF10群、IL2amp群と未治療群の間に有意な皮下腫瘍の抑制効果はみられなかった。そこで28日後に肺への転移を調べたところ、偽治療群では全匹に肺転移等を認めたが、HF群では半数に、IL2amp群では6匹中1匹に肺外腫瘍を認めただけで、HF10、IL2ampが4T1-lucの自然転移を抑制していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SCC-VII、4T1-lucをマウス尾静脈に接種したところ、肺腫瘍の形成を認めた。しかし腫瘍形成能、生存期間には個体差が認められたため、HF10、IL2amp接種による抗腫瘍効果、生存延長効果を検討することは困難と考えられた。
次にSCC-VII、4T1-lucを用いた多発皮下腫瘍への抗腫瘍効果を検討した。SCC-VIIでは治療側、未治療側共に、有意な腫瘍の成長効果が認められたが、いずれの治療群でも治療後に腫瘍の増大が認められ、有意な生存延長効果は認められなかった。また、4T1-lucを用いたモデルではHF10群、IL2amp群とも偽治療群のと間に有意な皮下腫瘍の成長抑制効果はみられなかった。しかし、マウスの肺を調べたところ、偽治療群では全例肺腫瘍等の形成が認められ、HF10群、IL2amp群において肺転移巣の減少が観察された。また、その肺腫瘍抑制効果はIL2amp群で顕著であった。
以上の結果より、4T1-luc皮下腫瘍モデルマウスで自然肺転移が誘発され、HF10、IL2amp接種により、4T1-lucの自然肺転移が著明に抑制された。その抑制効果は、IL2amp接種でさらに著明であることが示された。今後は皮下腫瘍―自然肺転移モデルを作成し、HF10、IL2ampを腫瘍内注射することによる肺転移への腫瘍抑制効果、生存延長効果などを検討する予定である。

今後の研究の推進方策

4T1-luc多発皮下腫瘍モデルではHF10、IL2amp接種による皮下腫瘍の抑制効果は統計学的に有意ではなかった。皮下腫瘍が腹腔側に徐々に大きくなっていったため、背側からの測定が困難であり、皮下腫瘍の抑制効果が正確に観察できなかったことが、他の腫瘍細胞株のような抗腫瘍効果が認められなかった原因の一つとも考えられた。しかし、HF10、IL2amp接種により自然肺転移への抑制効果が認められ、その抑制効果はIL2amp群で顕著であった。今後は皮下腫瘍―自然肺転移モデルを作成し、HF10、IL2ampを腫瘍内注射することによる肺転移への腫瘍抑制効果、生存延長効果などを検討する予定である。また、3回接種では腫瘍抑制効果が一定期間しか認められなかったため、治療回数、治療期間を増やして検討する予定である。また、肺転移を経時的に観察するため、ルシフェリンを注射して肺転移の増悪をin vivo imagerで観察する予定である。
治療効果が認められた場合は、皮下腫瘍、肺腫瘍の切片を作成し、腫瘍細胞の変化を病理組織学的に観察する。また腫瘍内に浸潤するT細胞、マクロファージなどのリンパ球のも検討する予定である。また、皮下腫瘍の蛋白を抽出し、皮下腫瘍内に誘導された抗腫瘍サイトカインにつき検討予定である。また全身性免疫を検討するため、各治療後のマウス脾細胞を採取し、腫瘍細胞で刺激することにより、抗腫瘍サイトカインの産生を検討する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] In vivo study of the antitumor effect of the IL2-HSV amplicon vector2016

    • 著者名/発表者名
      Goshima F, Esaki S, Tanaka R, Sato Y, Murata T, Nishiyama Y, Kimura H
    • 学会等名
      第64回日本ウイルス学会学術集会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
    • 年月日
      2016-10-23 – 2016-10-25
  • [学会発表] Combination therapy with oncolytic HSV HF10 and dacarbazine for malignant melanoma2016

    • 著者名/発表者名
      Goshima F, Esaki S, Tanaka R, Sato Y, Murata T, Watanabe D, Kimura H
    • 学会等名
      10th International Oncolytic Virus Meeting, Vancouver
    • 発表場所
      Vancouver (Canada)
    • 年月日
      2016-10-01 – 2016-10-04
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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