血器腫瘍に対して著効を発揮したキメラ抗原受容体導入T細胞輸注療法の固形がんに対する適用拡大が期待されている。本研究では、がん微小環境における免疫抑制に大きく寄与する制御性T細胞とPD-L1に対して抵抗性を付与するGITR 副刺激分子のシグナル伝達ドメインを搭載するCARを作成し、CD28副刺激分子搭載CARに比してin vivoで優れた抗腫瘍効果を発揮する可能性をマウス治療モデルを用いて明らかにする。研究代表者は、TNFRSF系の副刺激分子GITRシグナルが細胞傷害性T細胞のTregによる活性化抑制を回避できることを報告した。また、そのGITR シグナルの下流で は TRAF を介して T 細胞活性化を増強していることか ら、SHP2 を介した PI3K の脱リン酸化による PD-L1 の抑制シグナルに抵抗性を示すことが考えられる。さらに、TNFRS 系の副刺激シグナルは抗アポ トーシス作用を発揮することから、T細胞輸注療法において、もう一つの鍵となる輸注T細胞の生体内での 生存性にも寄与することが考えられる。研究代表者は、CD3zとCD28由来のシグナル伝達ドメインを搭載したCEA特異的CAR(28z型-CAR)マウスT細胞に導入し、CEAトランスジェニックマウスを用いて、CEA陽性腫瘍担癌7日目に輸注する治療モデル系での抗腫瘍効果と安全性の評価を行ってきた。(OncoImmunology 2016)。本研究では、がん微小環境における免疫抑制シグナルに抵抗性のGITRシグナル伝達ドメインを搭載したCEA特異的CAR(zG型-CAR)導入T細胞の固形がんに対する有効性と優位性を、SHP2の脱リン酸化作用により失活する28z型 CARとの比較により明らかにする。これにより、固形がんに特有ながん微小環境における免疫抑制機構を回避できるCAT-Tによる細胞輸注療法の開発を目指す。
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