研究課題
開発した新規免疫応答測定法を用い、マウス繊維芽肉腫細胞株CMS7を対象に変異抗原に対する免疫応答解析を行った。exomeシークエンスによりCMS7腫瘍ゲノムにコードされる遺伝子変異を同定し、RNAseqでの発現予測及びH-2への結合性を考慮し57種類の変異エピトープペプチド(8~10mer)を作製した。CMS7腫瘍を担癌し、抗PD-1/CTLA-4/GITR抗体の腹腔内投与による治療の後に変異ペプチド群に対する免疫応答解析を行い、Staphylococcal nuclease domain-containing protein 1 (Snd1)遺伝子の変異に由来するペプチド(mSnd1; YAPCRGEF)に対する免疫応答を検出した。特記すべきこととして、無治療担癌マウス脾臓においてもmSnd1に対する免疫応答が検出された。通常使用されるIFN-γ ICS(intracellular staining)法及びELISPOT法では、mSnd1に対する免疫応答が治療群では同様に検出されるが無治療群では検出できず、申請者らの開発した免疫応答検出法の鋭敏性が強く示唆された。また、野生型ペプチド(wSnd1; YAPRRGEF)に対する免疫応答は新規測定法を用いても両群で検出されず、変異抗原特異的な免疫応答が担癌マウスで惹起されていることが明確になった。さらに、当初の計画通りにタンデムmRNAを用いたスクリーニング法の妥当性を、今回同定した変異遺伝子Snd1を用いて行った。変異部位を中心に31merとなるように塩基配列を設定し、同様に設定した他9種類の無関連変異抗原と直列に配置しmRNAを作製した。電気穿孔法によりP1.HTR細胞(H-2d)に導入後、担癌マウス脾臓細胞に混入しCXCR3リガンドmRNAを測定することで特異的免疫応答のスクリーニングが可能であることを確認している。
2: おおむね順調に進展している
CMS7腫瘍株でのスクリーニングにより変異抗原mSnd1を同定しており、且つタンデムmRNAを用いたスクリーニングの妥当性検証を終了している。NGS解析をCMS5及びB16腫瘍細胞株で終了しており、今後はタンデムmRNAを用いた変異抗原特異的な免疫応答解析が加速すると予想される。
現在、既にCT26(マウス大腸がん細胞株)及びマウス繊維芽細胞株(CMS7)の変異抗原に対する免疫応答解析に着手しており、今後はCMS5及びC57BL/6マウス系統由来B16メラノーマ細胞株での解析を開始する。既に両腫瘍では次世代シークエンスによる変異遺伝子同定を終了しており、H28年度に妥当性検証を行ったタンデムmRNAを用いたスクリーニング法を用いて、より効率的に免疫原性の高い変異抗原が同定可能となることが予想される。CMS7細胞株で同定したmSnd1は非常に免疫原性の高い特異な変異抗原であると考えている。理由として、担癌無治療マウス脾臓細胞株においてもmSnd1に対する免疫応答が検出可能となっており、Immuno-competentなマウスでのこのような免疫原性の高い抗原の報告は極めて限定的である。腫瘍局所及び所属リンパ節でのより詳細な解析を行うため現在テトラマー作製を進めている。H29年度には各種腫瘍細胞株での免疫原性の高いそれぞれの変異抗原群を可能な限り同定し、化学療法剤・ワクチン・抗チェックポイント・放射線等を組み合わせた複合免疫療法での各抗原群への免疫応答の変化、治療効果を徐々に明らかにしていく予定である。
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OncoImmunology
巻: 6(5) ページ: -
10.1080/2162402X.2017.1306617.