研究課題/領域番号 |
16K07168
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
宮原 慶裕 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10582083)
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研究分担者 |
原田 直純 三重大学, 医学系研究科, 特任講師(研究担当) (40520961) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 変異抗原 / 複合免疫療法 / ワクチン |
研究実績の概要 |
平成28年度にマウス繊維芽肉腫細胞株CMS7をモデルとして高免疫原性変異抗原Snd1 (staphylococcal nuclease domain-containing protein 1 )由来8merペプチド(mSnd1; YAPCRGEF)を同定した。この変異ペプチドはIEDBでのH-2Ddへの結合性の高さを指標に選択し、同定したエピトープである。平成29年度には、このmSnd1に対する免疫応答を詳細に検討するため、CMS7担癌マウスにおいて惹起されるmSnd1特異的CD8陽性T細胞からTCRを取得した。しかし、予想外に、これらmSnd1特異的TCRを発現導入したマウスT細胞の抗原認識はH-2DdではなくH-2Kd拘束性であった。さらに、取得した全てのTCRはCMS7腫瘍株を認識するものの、一部のTCRのみがmSnd1を添加(final 1uM)したH-2d陽性P1.HTR腫瘍株を認識した。取得したTCRのfunctional avidityは1uM~10uM程度と予想外に低く、同定したmSnd1 (YAPCRGEF)は腫瘍細胞表面に実際に提示されている抗原ではない可能性が強く示唆された。そのためSnd1抗原の変異部位を含むH-2Kdに結合性の高いペプチドを作製し、それらペプチドへの反応性を検証した。結果、9merのペプチド mSnd1(SYAPCRGEF)への反応性が最も高い(>500pM)ことが明らかとなった。今回新たに候補となった9mer mSnd1ペプチド(SYAPCRGEF)は、In silicoでの変異抗原の選択の際に用いた基準(IC50 <4000nM, percentile rank <0.6)では選択されないエピトープであったが、基準を修正することにより選択可能であることが明らかとなった。これらの結果は今後の変異抗原選択に有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異抗原を標的とした免疫療法では、変異抗原とその抗原に対する宿主の免疫応答を詳細に検討することが必須と考えられる。本年度の詳細な変異抗原に対する免疫応答の解析から、治療に有用と考えられる変異抗原の候補選択の際の問題点が明確となったが、この問題点を解決する手段をマウスモデルにおいて可能となる道筋をつけることができた。これら本年度に得られた結果は今後の研究に非常に有用であり、今後の研究の大幅な進捗が期待できると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後はCMS7腫瘍株で同定した変異抗原Snd1に注目し、変異部位を中心に位置する31merのロングペプチドを作製し、取得した高免疫原性変異型Snd1を抗原としたワクチン療法の効果の検討を行っていく。既に変異型Snd1由来31merロングペプチド及びその野生型Snd1由来31merロングペプチドを包埋する独自のドラッグデリバリーシステムであるCHP(cholesteryl pullulan)ロングペプチドワクチンの作製を終了しており、これらワクチンの抗腫瘍効果の確認と、ショートペプチドワクチンとの効果の比較を行っていく。また予定通り、H30年度には各種腫瘍細胞株での免疫原性の高い変異抗原を独自に開発した新規免疫応答測定法を用いての同定の試みを継続するとともに、化学療法剤・ワクチン・抗チェックポイント・放射線等を組み合わせた複合免疫療法での免疫応答の変化、治療効果を検討し、最適化を図っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由):ペプチドワクチンの作製の際に必要となるペプチドの価格が当初の計画より安価で済んだため。 (使用計画):H30年度のマウス実験に使用する予定である。
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