研究課題
昨年度までに同定したマウス繊維芽肉腫細胞株CMS7がコードする高免疫原性変異抗原mSnd1ペプチド(SYAPCRGEF)をモデルとして使用し、マウス治療モデルにおける変異抗原ワクチンの有効性検証を行っている。まず実施した、CMS7腫瘍株を担癌したマウスを用いた治療モデルにおけるショートペプチド(SYAPCRGEF)及びアジュバントとしてPolyICを用いた検討においては有意な腫瘍増殖抑制効果を認めなかった。そのため次に、ロングペプチドワクチンを用いた変異抗原ワクチン治療、特に独自のドラッグデリバリーシステムであるCHP(cholesteryl pullulan)を用いて作製したロングペプチドワクチンを用いた検討を行った。このCHP包埋ワクチンの特性・有効性については論文報告を行っている(J Clin Invest. 2019 Mar 1;129(3):1278-1294.)。具体的には、アミノ酸変異部位(R to C)を中心に置く変異型Snd1由来31merロングペプチド及びその野生型Snd1由来31merロングペプチドをCHP包埋したワクチン製剤を作製し、これらワクチンの腫瘍増殖抑制効果の検討を行った。投与方法として皮下接種を行い、アジュバントとしてPolyICを使用した。結果、CHP包埋野生型ロングワクチンでは認められなかった有意な腫瘍増殖抑制効果をCHP包埋変異型ロングペプチドワクチンにおいて観察することができた。この結果はCHPを用いた変異抗原ロングペプチドワクチンの有効性を明確に示すと考えられた。現在進行中である、この変異抗原ワクチンと化学療法剤・抗チェックポイント抗体・放射線等を組み合わせた複合免疫療法での免疫応答の変化、治療効果の検討を通じて、治療最適化を図るための基盤整備ができたと考えられた。
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The Journal of Clinical Investigation
巻: 129(3) ページ: 1278-1294
10.1172/JCI97642.