研究課題/領域番号 |
16K07169
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
旦部 幸博 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50283560)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 分子標的薬 / 分子模倣 / 抗癌剤 / Drs癌抑制遺伝子 / Sushiモチーフ |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒト癌の悪性化過程でしばしば発現消失する癌抑制遺伝子Drsに着目し、そのタンパク立体構造をミミック(分子模倣)する低分子化合物の抗腫瘍作用を解析し、新たな抗腫瘍性分子標的薬としての可能性を検討することを目的に実験を行った。 Drsの抗腫瘍活性に重要なSushiモチーフの部分構造をミミックする複数の候補化合物(以下MI化合物)を新規合成し、ヒト癌細胞株を指標にしたin vitro抗腫瘍活性スクリーニングを実施した。まず、第一次スクリーニングでは12種のMI化合物について、大腸癌細胞株DLD-1、ヒト膵臓癌細胞株MIAPaCa-2などの足場非依存性増殖(軟寒天培地中のコロニー形成)抑制作用を検討した結果、いずれの癌細胞株に対しても比較的低濃度(10μM以下)で有効なMI化合物を複数見いだした。そのいくつかの化合物は正常細胞に対する細胞毒性が低く、MIAPaCa-2に顕著な抗腫瘍活性を示したことから、難治性の膵臓癌への有用性が期待される。 この結果を踏まえて新たな化合物をデザインし、15種類のMI化合物を用いて第二次スクリーニングを行い、足場非依存性増殖抑制活性を持つ化合物をさらに複数見いだした。ただし第一次スクリーニングと比較して顕著に低濃度でも有効な、高活性の化合物は見られなかった。MI化合物の抗腫瘍作用をさらに解析するため、癌の転移や再発との関係が報告されている癌幹細胞に対する効果を検討した。幹細胞性の指標となる三次元スフェロイド実験系を立ち上げ、スフェロイド形成抑制能を解析したところ、第一次、第二次スクリーニングで見いだしたMI化合物は抑制活性を示した。また幹細胞性の指標となるCD44などマーカー分子発現にも一部に抑制が認められた。また次年度以降の研究に備えて、ヌードマウスを用いた皮下移植腫瘍、同所性膵臓癌移植モデル実験の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は10月からの追加採用であったため初年度の研究期間は、計画当初予定より短かったが、第一次・第二次スクリーニングでどちらも抗腫瘍活性を持つ候補化合物を見いだすことに成功した。また新たな実験系として、三次元スフェロイド形成実験技術を研究室内に確立し、計画当初目的としていた内容に近い状況で進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
第一次・第二次スクリーニングで抗腫瘍活性を持つMI化合物は得られたが、臨床応用を視野に入れた場合は、現在のものよりもより低濃度かつ低毒性の化合物であることが望ましい。このため三次以降のスクリーニングを進める。ただし、そうした化合物が見つからない可能性も想定し、現在までに得られたMI化合物を用いて、抗腫瘍作用メカニズムを明らかにするための実験と、in vivoでの効果を検討するための動物実験についても、それと並行して進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中からの交付で、できるだけ当初計画に沿うように実験を進め、概ね予定通りに進捗させることができたものの、学会発表などの予定変更が避けられず多少のずれを生じたため、物品費の一部を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費として、細胞生物学実験用試薬および消耗品の購入に充てる
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