研究課題/領域番号 |
16K07170
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀部 智久 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (20467468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タンパク質 / 分子シャペロン / 癌 / ケミカルバイオロジー / 発光イメージング |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞内のタンパク質の正しい折りたたみに重要なジスルフィド結合の形成、還元、異性化を触媒し、また、誤って折りたたまれたタンパク質の介助を担う、シャペロン活性も有するプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の関連タンパク質の一つであるPDIP5の悪性脳腫瘍細胞内における機能的な役割の解明をこれまでに同定した活性阻害剤、一細胞レベルでの新規発光/蛍光同時リアルタイムイメージング法などを用いて行い、悪性脳腫瘍においてP5を標的とすることの有用性をおよび新たな抗癌標的療法の可能性を提示することを目的としている。平成28年度は、主に下記の研究内容を行った。 (1)悪性脳腫瘍細胞内でP5と特異的に結合するタンパク質の検索および同定 アフィニティー精製およびP5以外のPDI関連タンパク質と交差反応しないことを確認した抗P5抗体を用いた免疫沈降を行った結果、正常細胞と比較して悪性脳腫瘍細胞内においてP5と特異的に結合する候補タンパク質がSDS-PAGE後の銀染色において確認された。質量分析(LC/MS/MS)による解析の結果、その一つががんの浸潤、転移に重要なタンパク質であることが確認された。 (2)悪性脳腫瘍細胞内でP5と特異的に結合するタンパク質の機能解析 (1)で同定されたタンパク質の悪性脳腫瘍細胞内における機能を調べるために、siRNAによるノックダウンを行った。また、同様に悪性脳腫瘍細胞においてP5のノックダウンを行い、悪性脳腫瘍細胞の増殖、遊走におよぼす影響を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度に予定していた結合タンパク質の同定および悪性脳腫瘍細胞内におけるP5の機能解析に関して、ノックダウンにおける影響などいくつか良好な結果が得られているため、ここまでおおむね順調に進行していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
一細胞レベル発光イメージング手法等を用いて、H28年度で同定された結合タンパク質の悪性脳腫瘍内におけるさらなる機能解析を行う。また、P5の悪性脳腫瘍細胞内における量的変化が及ぼす影響をさらに調べ、分子標的としての有用性を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H28年度に予定していたsiRNA、細胞培養用試薬、イメージングに必要な実験試薬などの消耗品に使用量が当初の想定よりもおさえることができたため、また、タンパク質の同定がスムーズに行えたために、これら実験に予定していた諸費用をおさえることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度の研究費の使用としては、主に次の項目で使用予定である。 癌細胞の増殖、遊走の影響を調べるために必要となる生細胞測定試薬類および各種キット類、一細胞レベル発光イメージングによる測定および解析を行う際に必要不可欠な、発光用(基質含む)試薬類および各種消耗品、さらには、動物購入、保守費用、細胞培養関連および維持管理に必要な消耗品、関連器具類。その他、研究成果発表(学会など含む)および打ち合わせのための費用(旅費等)を予定している。
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