本研究では、細胞内のタンパク質の正しい折りたたみに重要なジスルフィド結合の形成、還元、異性化を触媒し、また、誤って折りたたまれたタンパク質の介助を担う、シャペロン活性も有するプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)の関連タンパク質の一つであるPDIP5の悪性脳腫瘍細胞内における機能的な役割の解明を行い、悪性脳腫瘍においてP5を標的とすることの有用性をおよび新たな抗癌標的療法の可能性を提示することを目的としている。平成30年度は、主に下記の研究内容を行った。 (1)P5のバリアントに関する機能解析;H29年度に引き続き、悪性脳腫瘍細胞内におけるP5のバリアントに関して、機能解析を行った。バリアントとNanoLucを融合した発現ベクターを、悪性脳腫瘍細胞株に一過性にトランスフェクションを行い、抗P5抗体を用いたウェスタンブロッティングを行った結果、これらすべてのバリアントのシグナルペプチドが同じ部位で切断されている可能性が示唆された。 (2)P5結合タンパク質の機能解析;H28年度に悪性脳腫瘍細胞内でP5と結合することが同定されたタンパク質に関して、siRNAによるP5のノックダウン時における影響を調べた。その結果、悪性脳腫瘍細胞内において、P5のノックダウンにより結合タンパク質のリン酸化に影響を与える可能性が示唆された。 (3)悪性脳腫瘍細胞内におけるmiRNAのP5への影響に関して;P5の3’-UTR領域にいくつかの悪性脳腫瘍に関連のmiRNAの候補領域が見出されたため、P5の発現に及ぼす影響をレポーターアッセイおよび、LV200システムを用いた一細胞レベルでのイメージング手法により検討した結果、miRNA149がP5の発現に影響する可能性が示唆された。
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