研究課題
近年提唱されたT細胞分画のひとつである幹細胞様メモリー(記憶)T細胞(stem cell memory (SCM) T-cell)は、養子免疫T細胞療法の際に用いることで、より高い治療効果の得られるT細胞として注目されている。しかし、幹細胞様メモリーT細胞の分化様式、T細胞レパトアの構成は未だ不明な点が多い。我々は、次世代シークエンサーによる網羅的解析と1細胞単離(シグルセルソーティング)解析よる1細胞毎のT細胞受容体のα鎖、β鎖のペアの情報を組み合わせて解析する技術を開発し、この解析方法を用いて、種々のT細胞分画のレパトアを詳細に解析した。健康ドナーの末梢血T細胞をフローサイトメトリーを用いて、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、エフェクーT細胞、および幹細胞様メモリーT細胞に分離し解析を行った。同時にサイトメガロウイルス特異的T細胞をテトラマーを用いて分離し解析を行った。T細胞受容体の抗原特異性と抗原結合能を調べるために、解析したT細胞受容体を遺伝子導入するプラスミドベクターを作成し、抗原非特異的T細胞に遺伝子導入して検討した。T細胞受容体の抗原特異性は、インターフェロン-γの放出により、T細胞受容体の抗原結合能はサイトメガロウイルス特異的テトラマーの蛍光強度により確認した。その結果、健康ドナーの末梢血のサイトメガロウイルスpp65特異的T細胞は、高頻度に存在するT細胞クロノタイプほど抗原結合能が高かった。また、これらのT細胞クロノタイプは、抗原結合能が高いほど、個人間で共有されやすかった。さらに、幹細胞様メモリーT細胞のT細胞レパトアは、他のT細胞分画より多様性が低く、抗原結合能が高いT細胞クロノタイプを多く含んでいた。これらの結果より幹細胞様メモリーはより免疫学的に重要性が高いT細胞を蓄積するT細胞分画である可能性が示唆された。
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Frontiers in Immunology
巻: 9 ページ: 668
10.3389/fimmu.2018.00668