研究課題
1. イベルメクチンの胃癌増殖抑制効果の検討 イベルメクチンを胃癌株化細胞及びヒト胃癌細胞株を移植したマウス胃癌Xenograftモデルに投与するとコントロールに比べて、イベルメクチンの濃度依存性に腫瘍増殖抑制効果を認めた。2. イベルメクチンのYAP1を介した胃癌増殖抑制機序の検討 イベルメクチン感受性胃癌株化細胞においてイベルメクチンを投与することによりHippo経路の転写因子であるYAP1mRNAが減少し、核内YAP1蛋白が減少した。またYAP1は細胞増殖関連遺伝子であるCTGFを誘導するが、イベルメクチンの投与によりCTGFの発現が減弱した。またYAP1mRNAをノックダウンすることによりイベルメクチンの細胞増殖抑制効果を減弱した。つまり、イベルメクチンはHippo経路のYAP1発現を抑制することにより細胞増殖を抑制しうる。3. 胃癌臨床検体におけるYAP1発現の意義を検討 胃癌症例でYAP1の発現を解析したところ、YAP1高発現症例は有意に分化度が低く、壁深達度が進行し、脈管侵襲が多いことが判明した。さらに、胃癌症例におけるYAP1mRNAの発現と予後を、Kyushuデータセット(n=101), Singaporeデータセット(n=198) および公的データベース(Kaplan-Meier plotter database n=678)において解析すると、いずれのデータセットにおいてもYAP1 mRNA高発現群は低発現群に比べて有意に予後が悪いという結果が認められた。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、胃癌においてHippo経路が腫瘍増殖に関与し、Hippo経路の制御が新しい腫瘍増殖抑制機序であることを証明すること、およびYAP1発現を阻害するイベルメクチンの胃癌に対する新規治療薬としての有効性を同定することである。イベルメクチンがYAP1依存性に胃癌細胞の増殖抑制きたし、マウス胃癌Xenograftモデルにおいて抗腫瘍効果を認めることを同定した。また胃癌症例において、YAP1の高発現群は分化度が低下し、組織および脈管浸潤能が増強し、予後不良であった。これらよりイベルメクチンはYAP1を制御して抗腫瘍効果を認め、胃癌の新規治療薬としての可能性が示唆された。またこれらの結果をOncotarget誌に投稿し掲載された。
今年度の研究結果から、胃癌においてYAP1を介したイベルメクチンの腫瘍増殖抑制効果が治療に有効となり得ることが示唆された。抗寄生虫薬としてイベルメクチンはこれまで実際の患者に投与されており、その安全性に関して十分なデータの蓄積がある。今後は、ドラッグリポジショニングとして、イベルメクチンの胃癌患者に対する実際の治療効果を確認するために治験を計画する。またイベルメクチンが膵癌のように悪性度が高く有効な治療法の少ない癌腫においても有効性を示すことを証明する。
次年度、実験消耗品で使用予定。
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