研究課題/領域番号 |
16K07179
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
李 政樹 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (00567539)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ボルテゾミブ / 耐性機序 |
研究実績の概要 |
本研究は、プロテアソーム阻害剤の薬剤耐性機序を解明し、耐性機序のパターン化および耐性クローンに特異性の高い新規の分子標的を同定することを目的とする。具体的には、プロテアソーム阻害剤であるボルテゾミブに着目し、骨髄腫患者さんのボルテゾミブ治療の投与前および治療後の薬剤耐性獲得時に2点における、骨髄中の腫瘍細胞・ストローマ細胞を採取し、保存した。2016年度は、骨髄腫患者さんのボルテゾミブによる治療前、および、薬剤耐性獲得時の、治療前後のRNAシークエンス解析を8ペア検体(16サンプル)にて行った。ボルテゾミブ治療前後で、骨髄検体が採取された15症例のうち、治療の奏効率がPR以上だった8症例の治療前後検体の16サンプルを用いた。16サンプル中、一部にマッピング率が低いものがふくまれるものの、多くが総リード数の70から80%以上のマッピング率であった。また、すべてのサンプルにおいてマッピングされたリード数は、2500万リード数以上であった。遺伝子の発現量解析のみならず、遺伝子の変異や融合遺伝子等の探索に十分なリード数であると考えられた。8症例において、ボルテゾミブ耐性前後の各mappingされたリードの遺伝子変異の比較を行った。まず、各サンプルにおける遺伝子変異の検出条件として、①変異部位を含む部位のリードカバー数が20リード以上、②変異リード数が4リード以上、③変異頻度20%以上で設定した。そのような条件の下では、各サンプルの変異コール数は、3000-6000個になった。現在、耐性前後のペア検体解析で、耐性後に新たに出現した遺伝子変異を抽出し、ボルテゾミブ耐性にかかわるその意義について、検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、以下の項目を中心に研究行う計画であった。 ・骨髄腫細胞およびストローマ細胞の解析 (計画)骨髄腫患者さんのプロテアソーム阻害剤の治療直前、治療中(最良効果発現時)、薬剤耐性獲得時の各段階における骨髄および末梢血の検体を採取する。骨髄検査時の残余検体より、CD138ビーズを用いた骨髄腫細胞の回収を行い、また、残余骨髄検体を培養プレート上で2-3週ほど培養を行い、壁に付着し細網構造を取っている細胞集団を骨髄ストローマ細胞として認識し回収する。(研究遂行の実際)上記の採取・検体保存は着実に遂行し、骨髄腫細胞の検体解析はRNAシークエンスを中心に解析を行ったものの、ストローマ細胞に関しては付着細胞の回収は行ったものの、その解析はまだ十分に行えていない。骨髄腫細胞の耐性前後のペア解析と同様に、ストローマ細胞の耐性前後のペア検体は確保されているため、腫瘍細胞と同様に解析することは可能である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を継続発展させ、引き続きプロテアソーム阻害剤耐性時に獲得する特異的な遺伝子変異を同定し、かつ、遺伝子発現の変化を複数症例で検討を行い、耐性獲得機序のパターン化ならびに、高頻度な突然変異を同定することを目標とする。具体的には、まだ十分に検討されていない患者さんのストローマ細胞の解析を行う。RNAシークエンスならびにエクソン解析を行っていく予定である。 また、耐性前後の骨髄腫細胞のペア検体に関しては、さらに、全エクソン解析を追加し、RNAシークエンスデータと照合することで、プロテアソーム阻害剤の耐性獲得時に高頻度に観察される遺伝子変異を確定する。さらに、2017年度は、ボルテゾミブ耐性前後に採取した血清の解析も行う。具体的には、血清中のエキソソームを安定的に回収し、マイクロRNAなどのsmall RNAの解析を着手する。また、遊離核酸中にcell free DNAも抽出し、耐性前後に比較することで、薬剤耐性時に特異的に出現する遺伝子変異の検出を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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次年度使用額の使用計画 |
予定通りの物品の購入(エキソーム抽出試薬、シークエンス関連試薬)を行う。
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