研究課題/領域番号 |
16K07180
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
西田 浩子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80317130)
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研究分担者 |
山田 健人 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (60230463)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CD26 / モノクローナル抗体 / 多発性骨髄腫 / 骨髄腫細胞 / 破骨細胞 / ADCC / 新規薬剤 / SP分画 |
研究実績の概要 |
多発性骨髄腫は、主に骨髄において形質細胞が単クローン性に増殖する疾患で、骨髄腫の病的骨髄微小環境に依存した進展を示し、骨髄腫細胞と破骨細胞は、密接な相互作用を営み、骨を破壊しつつ、腫瘍が進展するという悪循環を形成する。よって、骨髄腫の治療戦略においては、骨髄腫細胞の増殖・生育環境の特徴から、腫瘍進展と共に、破骨細胞活性化による溶骨性骨破壊を制御する治療法の確立が重要である。本研究では、ヒト破骨細胞にはCD26が機能的に発現し、多発性骨髄腫患者骨髄では、破骨細胞・血管内皮細胞近傍にCD26陽性骨髄腫細胞が存在することを見出した。骨髄腫において、破骨細胞や間質細胞との共存により骨髄腫細胞のCD26発現は増強し、ヒト化抗CD26モノクローナル抗体は、破骨前駆細胞より破骨細胞への分化を抑制するだけでなく、CD26陽性骨髄腫細胞に対し、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)および直接的効果を通じ、抗腫瘍効果を呈する。更に、新規薬剤(Bortezomib、Lenalidomide)とヒト抗CD26抗体の併用投与により、CD26陽性骨髄腫細胞に対するADCC活性は相乗的に増強した。又、骨髄腫細胞のCD26陽性SP分画の割合は、抗CD26抗体投与によるADCC効果により減少し、Lenalidomideの併用でその効果は増強した。抗CD26抗体投与により、骨髄腫細胞と骨髄間質細胞の接着能が低下することも明らかとなった。免疫不全マウスにヒト骨片を移植し生着後、骨片内に直接、骨髄腫細胞を移植する骨髄腫マウスモデルを作成した生体内の解析では、抗CD26抗体は、ヒト骨髄におけるCD26陽性骨髄腫細胞の増殖およびCD26陽性破骨細胞分化の双方を抑制した。以上より、ヒト化抗CD26抗体は難治性骨髄腫において、骨髄腫細胞増殖と破骨細胞分化を同時に阻害する新規分子標的療法としてとして有用な治療戦略となりうる。
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