研究課題/領域番号 |
16K07184
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
福原 武志 順天堂大学, 医学部, その他 (20359673)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イムノトキシン / 抗体治療 / がん微小環境 / 間質 |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまでの研究で、改変型ジフテリア毒素を用いて薬物送達能を有する抗体の探索を進めてきており(Yamaguchi et al., 2015)、IL13Ra2をメラノーマの新たなバイオマーカーに同定した(投稿準備中)。過去にIL13Ra2は、膵癌や脳腫瘍でもバイオマーカーとして報告されており、転移を制御することが示唆されていたことから、がん微小環境の分泌する因子やIL13Ra2と相互作用すると見られる血管制御因子に着目して同定することを目的とした(H28-29年度)。 まずIL13Ra2の機能を明らかにする目的で、IL13Ra2の機能を安定に亢進または喪失するメラノーマ細胞SK-MEL28株を樹立した。これらの細胞を解析したところ、IL13Ra2強制発現細胞は、in vitroでは増殖抑制する結果を得た。しかしながら、この細胞をin vivoに移植したところ、コントロール群に比較して有意な造腫瘍性を示した。腫瘍塊を解析したところ、PECAM1(CD31)陽性の腫瘍血管と見られる細胞の形成が観察された。次に、様々ながん細胞および間質細胞のSecretome/Exosome解析を進めてIL13Ra2シグナルに依存した分泌因子の解析を進めており、候補因子としてAREGを同定した(投稿準備中)。AREGを中和可能なモノクローナル抗体の作成と選抜については進行中である。その他の分泌因子についても、レポーター細胞を導入することによりTGFbやTNFaなどが簡便かつスループット高く計測可能となった。 本年度は、論文発表1件(筆頭著者1件)、学会発表2件、招待講演および研究会発表5件を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に課題となった抗体に架橋する薬量の増加について、Maleimideを介した抗体とリポソームの架橋効率が低く問題であった。そこでイムノリポソームに抗体を架橋する方法を再検討し、NHS基を介することで架橋効率の上昇やイムノリポソーム作製の安定性をはかることができたと考えている。培養上清のSecretome/Exosomeを解析する計画について、PEG/NaCl試薬を用いた方法では大量に調製することが難しいため、各種レポーター細胞をもちいたサイトカイン活性の測定系を導入することを検討した。その結果、測定系は確立されたと考えている。2016年度末に粒径測定装置(Nanosight)が導入されたことにより、単離と検証が可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)抗AREG抗体の探索を継続する。当該タンパク質は分泌タンパク質であるが、マウス血球系細胞に発現させた安定発現株を免疫に利用している。抗体スクリーニング時にこの点を加味する必要があると思われた。細胞融合に化学融合に替えてHVE-Jを用いた細胞融合も検討する。昨年度は大量スケールの抗体精製について検討していたが、今後は効率の観点から50mlスケールの精製を複数本行うことで迅速な効率化を行う。(2) miRおよび分泌因子の探索については、文献情報を踏まえて継続する。サイズが限定されたExosomeだけでなく粒径の若干大きな分泌小胞についても考慮する必要が有ると思われるので、適応する。Secretomeについては、レポーター細胞を用いて個別因子のプロファイリングを行う一方で、アレイを利用した包括的な解析を行う予定である。(3) 細胞表面分子の探索については、抗体パネルを用いることを検討する。昨年度まで推進してきたように、内皮細胞を免疫原とした機能性抗体の探索と機能解析を行う。論文報告したCD321以外にも、低酸素曝露や炎症因子刺激により、抗体反応性(発現量や局在)が変化する抗体を複数樹立しており、これらの抗原を同定するとともに機能解析を進める。(4) 抗体を用いた動物実験を実施する。イムノリポソーム作製における抗体架橋法について解決できたと考えているので、蛍光色素またはドキシルを封入したイムノリポソームによる腫瘍への集積・治療実験を行う。腫瘍内皮を標的化可能か検討するとともに、ドキシルなどの封入による治療実験を計画する。
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