研究実績の概要 |
本研究の目的はエクソソームの分泌を制御するmiRNAおよびその標的遺伝子を明らかにすることで、新規のがん治療へと繋げることである。およそ2000種類のmiRNA mimicが搭載されたmiRNAライブラリと以前、開発したエクソソーム測定技術(Yoshioka Y et al., 2014)を用いたスクリーニングを行った。スクリーニングとバリデーションの結果、miR-194がエクソソームの分泌抑制に働いていることを明らかにした。miR-194は複数の報告でがん抑制的に働くことが示されており、がん細胞において発現が低下することでエクソソーム分泌を促進し、がん悪性化に働いている可能性が示唆された。次いで、miR-194の標的遺伝子の探索を行った。エクソソーム分泌を抑制するmiRNAを乳がん細胞株および前立腺がん細胞株に導入後、RNAを抽出し、mRNAのマイクロアレイを行い、発現が変動する遺伝子を網羅的に解析した。また、in silicoデータベースを用いてmiR-194の結合部位の有無および3'UTRアッセイによる検証と遺伝子の発現抑制効果を解析した。その結果、最終的にエクソソームの分泌を抑制する遺伝子としてNAPGに着目した。NAPGは乳がん、前立腺がんのみならず、各種腫瘍組織で発現が亢進していることがOncomineデータベースを用いた解析より明らかになり、実際に大腸がん、膵臓がん、メラノーマの細胞株において、NAPGの発現抑制によってエクソソームの分泌が減少した。以上より、エクソソーム分泌に関与する新規遺伝子を明らかにし、今後はその詳細な分子メカニズムを明らかにする。
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