研究課題/領域番号 |
16K07190
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
菊地 慶司 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他(移行) (90372094)
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研究分担者 |
星野 大輔 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, 副技幹・主任研究員 (30571434)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MT1-MMP / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
本年度は大腸がん細胞でのMT1-MMPによるEphA2切断についてその切断点の決定、およびBRAFに変異のあるメラノーマ・大腸がん細胞について、BRAFを標的とする分子標的薬剤vemurafenibの作用を検討した。 1.MT1-MMPによるEphA2の切断点については、これまでのところヒト繊維肉腫由来のHT1080細胞あるいは乳がん由来のMDA-MB-231細胞で報告されているが、両者は一致しておらず、細胞により切断点が異なっている可能性がある。このため、ヒト大腸がん由来のHCT116細胞にmycタグとHisタグを付加したEphA2とMT1-MMPを発現させて、MT1-MMPにより切断されたEphA2の断片(膜上のC末端側)のN末端側のアミノ酸配列をmass spectroscopyにより決定した。その結果、HCT116細胞でのMT1-MMPによるEphA2の切断点はHT1080細胞での切断点と一致した結果が得られ、少なくとも当該の切断点については細胞間で保存されうることが示された(投稿中)。 2.vemurafenibにはメラノーマ由来A375細胞に対する著名な殺細胞効果は認められなかった。大腸がん由来HT29細胞、COLO205細胞に対しても同様であった。なお、COLO205細胞において、vemurafenibはE-cadherinの発現を増強することから、既に報告されていることであるが、EMTを抑止する作用があることが確認された。ただし、HT29細胞ではそのような作用は認められず、細胞によってvemurafenibの作用に差があることが推測された。また、MT1-MMPを発現しているHT29細胞でMMP阻害剤(MT1-MMPも阻害する)がvemurafenibの作用を増強するか否かの検討をおこなったが、MMP阻害剤の効果は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MT1-MMPによるEphA2の切断について、より強固な知見を得ることができた。一方、これまでに検討したBRAF変異を持つがん細胞株で、vemurafenibに対する感受性が高いといえる細胞が見いだせなかったため、耐性細胞株の取得が遅れている。また、MT1-MMPの薬剤耐性に対する寄与を、MMP阻害剤を用いて検討しているが、現在までにMMP阻害剤の効果を確認できていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標のひとつは、MT1-MMPが分子標的薬剤に対する耐性に関与していることを示すことである。しかし、本研究で現在までに検討を行ったところでは、MMP阻害剤(MT1-MMPの活性も阻害する)が大腸がん由来HT29細胞の増殖および分子標的薬(vemurafenib)に影響を及ぼすという結果が得られていない。H29年度の方針として、まずがん細胞株の選択と培養系を工夫して、MT1-MMPが分子標的薬剤に対する耐性に関与していることを示していく。 1)MT1-MMPの、例えば細胞増殖への関与を評価するには、三次元培養系での検討が必要であると言われている。MT1-MMPの薬剤耐性への関与を評価する上でも三次元培養系を導入する必要があると考えられる。また、がん細胞の分子標的薬への感受性そのものも三次元培養系では二次元の培養系とは異なる可能性がある。これらを勘案し、H29年度は三次元培養系を用いて薬剤(vemurafenib あるいは trastuzumab)耐性および耐性へのMT1-MMPの関与を評価する系を構築する。 2) 1)の培養系を用いて、vemurafenib あるいは trastuzumabに耐性のがん細胞株を取得して、MT1-MMPの発現・活性化,およびEphA2の発現の状態(発現量、切断型の存在の割合、リン酸化レベル)を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたvemurafenib耐性細胞株の取得が遅れているため、耐性株の特性解析に計上していた試薬類の購入を行わなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
vemurafenibその他の分子標的薬剤に対する耐性を獲得した細胞株の樹立をすすめ、当初の計画に従って、それら細胞株の特性解析に必要な試薬類の購入に使用する。
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