研究実績の概要 |
1)大腸がん由来でBRAF変異を有するHT29細胞において、RNA干渉法によりMT1-MMPの発現を抑制したところ、vemurafenibへの感受性が増大したことから、MT1-MMPが抗がん剤への抵抗性に関与している可能性が示された。 2)HT29細胞のvemurafenibに耐性の細胞集団を取得した。耐性細胞においてはEphA2の発現の著しい低下がおこっており、MT1-MMPによって切断されたEphA2がvemurafenibに対する抵抗性に寄与するのかどうかは、当初に計画していたようには明らかにすることはできなかった。 3)collagen-Iを用いた3次元培養においてはHT29細胞の vemurafenibに対する感受性が増加する。一方、HT29細胞ではないがMT1-MMPを高発現しているA431細胞では3次元培養において MT1-MMPの発現が低下することが認められた。これらの結果はMT1-MMPがvemurafenibへの抵抗性に関与する可能性を支持する。 4)3)の分子機序を検討し、活性化した Focal adhesion kinase (FAK) および ErbB family kinase (EGFR, ErbB2, ErbB3)の量(総蛋白質の量および/またはリン酸化の割合)が3次元のcollagen-Iゲルで培養した場合、プラスチック表面で培養した場合に比べ著しく低いことを見出し、さらにFAK阻害剤は単剤ではvemurafenibの作用を増強しないがAfatinibはvemurafenib の作用を増強することを見出した。ErbB family kinase の活性がvemurafenib耐性に関与し、collagen-I ゲルに包埋した場合にはErbB family kinaseの活性が低いためにvemurafenibに対する感受性が高まると考えられる。
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