平成29年度にクローニングしたT細胞受容体遺伝子を用いて2点に関して検討を行った。 (1)ヒト末梢血T細胞における発現と特異性の確認である。レトロウイルスベクターにα遺伝子とβ遺伝子を両方を発現できるように作製したプラスミドを用いて、健常人末梢血由来活性化T細胞に導入したところ、約半数の細胞において特異的T細胞受容体が発現していた。これを用いてT細胞応答をIFN-γの産生にて判定したところ、同じ細胞数を加えたT細胞クローンと同等の反応性であった。T細胞受容体の陽性率が半数であったことと非特異的な反応性が非常に低かったことを併せて考察すると、T細胞受容体治療に大きな期待が持てると考えられた。 (2)今回得られたT細胞受容体遺伝子はミスペアリングが起きにくいようであるが、一般的なT細胞受容体遺伝子の導入においてはミスペアリングの防止は非常に大きな問題である。そのため、21-25塩基からなる一本鎖RNAであるmirの構造を利用したshRNA(shRNA-mir)による発現抑制を試みた。これを利用すべくEF-1αプロモーター下でshRNA-mirとマーカーとしてZsGreenを発現するように設計した。これレトロウイルスベクターで健常人末梢血由来活性化T細胞に導入したところ、T細胞受容体の発現抑制は見られなかった。またZsGreen自体の発現も低かった。 HLA ligandomeによるエピトープ解析は研究室の引っ越しや異動のため、1ヶ月以上実験を停止しなければならず、結果は出ていない。抗MHC抗体およびマウスの検体サンプルを集めた終わったので、今後実際の解析に着手するところである。
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