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2017 年度 実施状況報告書

Glypican-1を標的とした抗体薬物複合体による食道癌新規治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K07193
研究機関高知大学

研究代表者

世良田 聡  高知大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (50463302)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード抗体療法 / 食道癌
研究実績の概要

研究代表者は食道癌など難治性癌に対する新規治療法の開発を目的として独自に同定した新規癌抗原であるGlypican-1(GPC1)に着目し、独自に開発した細胞内侵入活性の高いモノクローナル抗体を用いて抗体薬物複合体を作成し、その薬効を解析した。本抗体はマウスGPC1にも交叉反応する性質があるため、in vivoでの実験モデルとして、マウスGPC1発現肺癌細胞株(LLC-mG16)およびコントロール株(LLC-C7)を樹立し、in vitroでの薬効解析と、マウスシンジェニックモデルを用いたin vivoでの薬効と安全性を評価した。その結果、in vitroにおいて、LLC-C7と比べてLLC-mG16ではGPC1-ADCの感受性が約17倍向上した。このことから、GPC1-ADCの薬効は細胞表面上の癌抗原の発現量に依存することが確認された。さらに、LLC-mG16をC57BL/6マウス皮下に移植したシンジェニックモデルを用いた薬効試験では、PBS投与群とコントロールADC(10 mg/kg)投与群の間には腫瘍体積に差が認められなかったが、GPC1-ADCは投与量(1mg/kg, 3mg/kg, 10mg/kg)と投与量を増量すると薬効も強く見られたため、投与量依存的な抗腫瘍効果が確認された。GPC1-ADC (10mg/kg)およびコントロールADC (10mg/kg)投与群で見られた体重減少は一過性のものであったことから、GPC1-ADCの安全性も確認された

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究代表者はこれまでに抗Glypican-1モノクローナル抗体にcathepsin Bにより切断されるペプチドリンカーとチューブリン重合阻害剤(Monomethyl auristatin F)MMAFをコンジュゲートしたGPC1-ADCとアイソタイプコントロール抗体のADCを製造した。そして、コントロールADCと比較してGPC1-ADCがGPC1発現陽性の食道癌細胞株に対して強力な抗腫瘍効果を示すことを明らかにし、その薬効はGPC1発現特異的であることをin vitroで証明した。さらに、研究代表者が開発した抗GPC1モノクローナル抗体はヒトGPC1以外に、マウスGPC1にも交叉反応を示すことを明らかにした。そこで、2017年度においてはADCを用いて、in vivoでの薬効と安全性の評価を同時に試みることとした。まず、マウスGPC1の発現が低いLLC株(マウス肺癌細胞株)にマウスGPC1を安定発現させた株LLC-mG16とコントロールベクター導入株(LLC-C7)樹立した。GPC1-ADC のIC50値はLLC-C7では16.35nMであったが、 LLC-mG16では0.961nMであり、マウスGPC1安定発現株ではGPC1-ADCの感受性が約17倍向上した。LLC-mG16をC57BL/6マウス皮下に移植したシンジェニックモデルにおいて、コントロールADCは抗腫瘍効果を示さなかったが、GPC1-ADCは投与量(1mg/kg, 3mg/kg, 10mg/kg)依存性に抗腫瘍効果を発揮した。この際、GPC1-ADC およびコントロールADCともに10mg/kgの投与群で見られた体重減少は一過性のものであったことから、安全性も確認された。

今後の研究の推進方策

GPC1-ADCの薬効を詳細に解明するため、今後、食道癌ゼノグラフトモデルおよび食道癌PDXマウスを用いて抗腫瘍効果を解析する。

次年度使用額が生じた理由

購入予定の試薬の在庫がなかったため、次年度使用額が生じた。
生じた次年度使用額については、次年度の研究計画に組み込んで使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Anti-glypican-1 antibody-drug conjugate exhibits potent preclinical antitumor activity against glypican-1 positive uterine cervical cancer.2018

    • 著者名/発表者名
      Matsuzaki S, Serada S, Hiramatsu K, Nojima S, Matsuzaki S, Ueda Y, Ohkawara T, Mabuchi S, Fujimoto M, Morii E, Yoshino K, Kimura T, Naka T.
    • 雑誌名

      Int J Cancer

      巻: 142 ページ: 1056-1066.

    • DOI

      10.1002/ijc.31124.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Glypican-1 targeted antibody-based therapy induces preclinical antitumor activity against esophageal squamous cell carcinoma.2017

    • 著者名/発表者名
      Harada E, Serada S, Fujimoto M, Takahashi Y, Takahashi T, Hara H, Nakatsuka R, Sugase T, Nishigaki T, Saito Y, Hiramatsu K, Nojima S, Mitsuo R, Ohkawara T, Morii E, Mori M, Doki Y, Kaneda Y, Naka T.
    • 雑誌名

      Oncotarget

      巻: 8 ページ: 24741-24752.

    • DOI

      10.18632/oncotarget.15799.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 膵癌に対する抗Glypican-1抗体薬物複合体による新規治療法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      西垣貴彦、高橋剛、世良田聡、田中晃司、宮崎安弘、牧野知紀、黒川幸典、山﨑誠、中島清一、滝口修司、森正樹、土岐祐一郎、仲哲治
    • 学会等名
      第26回日本がん転移学会学術集会・総会
  • [産業財産権] 抗GPC-1抗体2017

    • 発明者名
      仲哲治、世良田聡、藤本穣
    • 権利者名
      国立大学法人高知大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2017- 90054

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公開日: 2021-12-27  

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