研究実績の概要 |
研究代表者はこれまでに食道癌など難治性癌に対する新規癌抗原としてGlypican-1(GPC1)を同定し(Hara et al., 2016 BrJC)、GPC1を標的とした抗体薬物複合体を開発すべく、細胞内侵入活性の高いマウス抗GPC1モノクローナル抗体を作成済みである(Matsuzaki et al., 2018 IJC)。本抗体に切断型リンカーを用いてチューブリン重合阻害剤を結合させたGPC1-ADCを作成し、in vitro, in vivoでの薬効を解析した。 食道癌細胞株TE8、TE14細胞に対してGPC1-ADCはIC50 値でそれぞれ0.236 nM、0.467 nMの細胞増殖阻害活性を示した。GPC1-ADCがGPC1発現細胞に特異的に作用することを証明するために、CRISPR/Cas9システムによりGPC1の発現をノックアウトしたTE8-GPC1 KO細胞を樹立し、GPC1-ADCの薬効を解析した。その結果、GPC1-ADCはGPC1ノックアウトTE8細胞株に対しては抗腫瘍効果を発揮しなかったため、GPC1-ADCの薬効についてGPC1発現特異性が確認された。 In vivoでの薬効試験として独自に開発した食道癌PDXマウスを用いて検討した。食道癌PDX (ESCC14)を用いて、PBS、GPC1-ADC (3mg/kg, 10mg/kg)の3群に分けて試験を行った。その結果、薬効試験では、PBS投与群と比較して、GPC1-ADCは投与量(3mg/kg, 10mg/kg)を増量すると薬効も強く見られたため、投与量依存的な抗腫瘍効果が確認された。GPC1-ADC投与による体重減少も認められなかったことから、GPC1-ADCの有効性と安全性が確認された。
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