研究実績の概要 |
遺伝子発現の本質を理解するためには、RNAポリメラーゼ酵素が単独で認識できる[Constitutive promoter]と、認識に何らかの補助因子が必要な[Inducible promoter]とを区別する必要がある。本研究は大腸菌をモデル生物として、Genomic SELEX法 (gSELEX法)によって、大腸菌の全7種類のシグマ因子のConstitutive promoterの同定を目指して実施されている。 今年度は、昨年度実施したgSELEXの結果について、詳細な解析を行った。その結果、RpoD, RpoN, RpoS, RpoH, RpoF, RpoEの6種類のシグマ因子について、既知の標的プロモーターに加えて、新規のプロモーターが同定された事が確認された。その中でも特に明確な新規の機能が同定された、RpoS, RpoH, RpoF, RpoEについて解析を進めた。gSELEXによって同定されたこれらのゲノム上の結合領域数は、それぞれ218、133、105、126であり、近傍の遺伝子の配置から見積もられたConstitutive promoter数のそれぞれ最少数と最大数は129-179、101-142、34-41、77-106であった。この情報に基づいてそれぞれのプロモーターリストを作成し、 既知のプロモーターと比較する事で、Inducible promoterについても考察した。また、全7種類のシグマ因子について、対数増殖期および定常期の細胞内のシグマ因子の濃度を測定し、その結果と合わせて、シグマ因子によるゲノムの遺伝子発現の全体像を考察した。これらの成果を基に学術論文を作製し、PLoS ONE誌にて発表した。
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